【サッカー日本代表】森保監督の「だったらいいな」選考は不発。北中米W杯、長期政権のデメリットも露呈
日本代表の森保一監督。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
負傷明け、実戦不足がフィールド選手のほぼ半数。「信頼」と「団結」に懸けたが――。
FIFA北中米ワールドカップ(北中米W杯)で、サッカー日本代表(SAMURAI BLUE)は1勝2分1敗の成績に終わり、ラウンド32で敗退した。
チュニジア代表に4-0で勝利してグループステージを突破し、全4試合でゴールを奪ったものの、白星を挙げたのはその1試合だけだった。
その結果とともに検証されるべきなのが、森保一監督の選手選考だ。
大会前に負傷していた選手や復帰直後の選手、所属クラブで出場機会を失っていた選手が多く選ばれた。指揮官は現在のコンディション以上に、これまでの実績や代表への貢献、チーム内で築いてきた信頼関係を重視した。
「代表に合流すれば状態が上がる」「限られた時間でも、本来の力を発揮してくれる」と見込んだ、いわば「だったらいいな」という希望的観測を積み重ねた選考だった。
しかし、その賭けは総じて不発に終わったと言わざるを得ない。
大会に間に合い、戦力になれば――と見込んだ選考と編成だった。遠藤航の離脱がクローズアップされるが、冨安健洋と板倉滉も万全とは言い難かった。
板倉は背中を負傷して2月から離脱し、シーズン最終盤に復帰したものの、継続して試合を重ねられなかった。冨安も同様で、5月に再びピッチへ立ったが、出場時間は限られていた。
それでも森保監督は2人を信じて選出した。チュニジア戦では冨安、板倉、伊藤洋輝による3バックが相手を無失点に抑えたものの、大会を通じて最終ラインの軸としてフル稼働するには至らなかった。
局面ごとに能力の高さを示した一方、大会を勝ち抜くために継続して起用できる状態ではなかった。招集時から懸念されていた実戦不足も解消されなかった。
リーグ最終戦で鎖骨を骨折した鈴木唯人も、攻撃陣の切り札として招集されたが、十分な存在感を示せなかった。“ムードメーカー枠”として選ばれた長友佑都も、ハムストリングの負傷から復帰したばかりだった。
さらに小川航基、塩貝健人、町野修斗も、大会前には所属クラブでコンスタントな出場機会を得られていなかった。
もちろん、チームに結束をもたらす選手は必要だ。ただ、大会直前までこれだけ多くの選手がプレーできずにいた。結果として、現状のパフォーマンスよりも「本来の力を発揮してくれる」という期待に寄せすぎた選考になったと言える。
負傷や負傷明け、実戦不足という観点から整理すると、次の選手たちが該当した。
・遠藤航:左足甲の靱帯を損傷して手術を受け、開幕直前に離脱した
・鈴木唯人:右鎖骨骨折からの復帰途上にあった
・冨安健洋:長期離脱から復帰したものの、クラブでの出場時間が限られていた
・板倉滉:背中の故障から復帰したばかりだった
・長友佑都:ハムストリングの負傷から復帰した直後だった
・鈴木淳之介:コンディション面に不安を残していた
・久保建英:大会直前に復帰し、本大会初戦で左膝を負傷した
・小川航基:所属クラブで出場機会を減らしていた
・塩貝健人:移籍後も先発に定着できていなかった
・町野修斗:クラブでベンチスタートが続くなか、遠藤に代わって追加招集された
加えて谷口彰悟と渡辺剛も、大会までの過程でケガやコンディションへの不安を抱えていた。バイエルン・ミュンヘンの伊藤洋輝も負傷明けで、フル稼働できる状態には至っていなかった。
一人、二人であれば、エースや主将の復帰に懸ける判断も理解できた。しかし、それがチーム全体の半数近くに及べば、もはや例外的な措置とは言えず、チームの編成方針そのものだったと見るべきだろう。
2022年のカタール・ワールドカップでも、大会直前に田中碧や板倉らが負傷していた。それでも田中はスペイン代表戦で決勝ゴールを決め、板倉もグループステージ突破に貢献した。
ただし、当時の負傷は比較的、復帰の見通しを立てやすいアクシデントだった。大会前まで継続してプレーしてきた土台もあり、復帰すれば戦力になるという計算が立った。
今回は状況が異なっていた。
長期離脱や手術明けに加え、再発のリスク、慢性的なコンディション不良、所属クラブでの実戦不足が重なった。いつ復帰できるかだけでなく、復帰後にどこまで強度を上げられるかも不透明な選手が多かった。
「ケガ人が間に合った」というカタール大会での成功体験が、今回の判断を後押しした面もあったのではないか。しかし、前回と今回は負傷の質も、選手が置かれていた状況も異なっていた。
長期政権がもたらしたメリットとデメリット
森保監督は前回カタールW杯でドイツ代表とスペイン代表を破り、グループステージを1位で突破した。その結果によって続投を果たし、北中米W杯までの4年間は、周囲の声以上に自身の信念とやり方を貫くことができた。
長期政権には、戦術への理解を深め、選手との信頼関係を築き、限られた代表活動のなかでもチームを一つにできるメリットがある。実際、日本代表の選手たちは繰り返し「団結力」を強調してきた。
一方、その信頼が強くなりすぎれば、現在のパフォーマンスよりも過去の実績を優先することにつながる。
「苦しい時にチームを救ってくれる」「一緒に戦ってきたからこそ信頼できる」といった評価が内部で繰り返され、異なる見方が入りにくくなれば、結束力がエコーチェンバーを生む危険性もある。チーム内で築いた信頼が、そのまま大会時点での競争力を保証するわけではない。
日本が今大会でもグループステージを突破したことは、評価されるべき成果である。それでもオランダ代表に追い付いた粘りも評価できるが、大会を通じて想定を超えるような戦いを見せたとは言い難かった。
負傷明けでも大会に間に合い、実戦不足でも代表で状態が上がり、出場時間が限られていても本来の力を発揮してくれる。森保監督は「信頼」と「団結」を武器に、その可能性に懸けた。
しかし、短期決戦で重要なのは、過去の実績だけではない。「うまくいったらいいな」という選考は、結局、「やっぱり難しかった」という結果に終わった。
北中米W杯で露呈したのは、選手個々の力だけではなかった。長期政権によって築かれた強固な結束と、その裏側で進んだ選考基準の硬直化も、今後に向けたテーマになり得る。
その「結束力」を来年1月のアジアカップで再び森保ジャパンの武器にするのかどうかも注目点になる。
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