松本J1昇格。田中隼磨「天国のマツさんは『情けないな』と言っている」
松本山雅FCでの田中隼磨。(C)SAKANOWA
J2優勝と同時に強く思った「松本でJ1のシャーレを掲げたい」。
[J2 42節] 松本 0-0 徳島/2018年11月17日/サンプロアルウィン
J2首位の松本山雅FCが42節の徳島ヴォルティス戦をスコアレスドローで締め括り、通算21勝14分7敗の勝点77で前節に続いてリーグ1位を守り、4年ぶりのJ1復帰を決めた。
3-4-2-1の右ウイングバックでフル出場した田中隼磨は、「僕自身、松本で生まれ育って、ここで最高の雰囲気のなかでJ2優勝のタイトルと優勝を決められて本当に嬉しいです」と喜びを噛み締めた。しかし同時に、「新たな戦いに向けてやらなければいけない。その想いのほうが強くなった。ここから死に物狂いでやらないといけない」と、2015シーズン以来となるJ1での戦いに向けて、早くも気持ちを引き締めていた。
早くも新たなる目標も打ち立てた。
「J2のシャーレを持った瞬間、次は松本でJ1のシャーレを掲げたい。そう強く思いました」
今季リーグ戦は23試合2ゴール。田中は一時ポジションを失った。途轍もなく悔しいを想いをしてきたという。ただ、だからこそ、その悔しさをも原動力にして、シーズン終盤は主力の座を再び掴み、41節のアウェーでの栃木SC戦(〇1-0)では決勝ゴールを奪取。J1昇格を果たす、チームの底力といえる存在になった。
「ポジションを自分のモノだとは思っていない。反町監督からも『代えがいれば、とっくに代えている』と言われていますから」
危機感は常にある。ただ、まだ自身の改善点も認識している。だからこそ田中は、さらに進化を遂げられるはずだと感じている。
そして松本では、松田直樹の背番号3を引き継いで戦ってきた。その話題になると、田中は頷いて語った。
「天国にいるマツさんは、最後勝てなくて『情けないな』と言っていると思います。まだまだ力が足りないなって。このままではダメだということです」
松本のユニフォームの背番号3を介しての松田との対話。それも田中を触発する力の一つになっている。
「守備に向かうのと同じぐらいのエネルギーを、攻撃に回していかなければ」
チームリーダーとしての自覚もある。何より――松本のユニフォームが似合う男だ。田中の言葉は、すべて未来へと向かっていた。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI