【浦和】決して偶然ではなかった宇賀神の天皇杯決勝弾。柏木も長澤も『狙っていた形』だった
天皇杯を制した浦和。宇賀神(中央)を中心に、武藤(左)、興梠(右)と。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
仙台のゾーンディフェンスの”癖”もスカウティングしていた。
[天皇杯 決勝] 浦和 1-0 仙台/2018年12月9日/埼玉スタジアム2〇〇2
宇賀神友弥の火を噴くキャノン砲が、浦和レッズに12年ぶり三度目の天皇杯優勝をもたらした。ベガルタ仙台の渡邉晋監督も「スーパーゴールを決められた」と認めた一撃。しかし決して偶然で決まったわけではなかった。
仙台にボールを持たれた立ち上がりの時間帯を凌ぎ、徐々に浦和が流れを掴み始めた13分にゴールは決まる。右コーナーキック。柏木陽介はショートコーナーを選択し、手前にいた長澤和輝につなぐ。長澤のクロスは相手にクリアされるが、バイタルエリアにいた宇賀神が迷わず右足で合わせ、強烈なショットが仙台ゴールに突き刺さった。
「ショートコーナーから(長澤)和輝がクロスを入れて、セカンドボールを狙う練習はしていた」と柏木は語る。また、宇賀神は「仙台がコーナーキックに対しゾーンディフェンスで守ってくることは知っていた。それによって、こぼれ球が(シュートを放った)あのゾーンにこぼれてくることがあるというスカウティングもしていました」と明かしていた。
仙台の守備の癖を見抜き、”あのゾーン”を狙っていた。だからこそ宇賀神は自信を持って踏み込み、蹴り込むことができた。
「誰もが予想だにしていなかったとは思いますけれどね」と宇賀神は笑う。ただ、実際のところは「こぼれ球が『来た!』と思ったのでは?」と聞くと、彼は頷いて次のように語った。
「何本も今年はあのようなチャンスがありました。前回のJリーグの仙台戦(29節、1-1)でもアディショナルタイムに惜しいボレーシュートがありました。だから今回は自信を持ってプレーできていたので、そうですね『来た!』とは思いました」
迷わずしっかりミートさせた一撃は、浦和にかかわるすべての人の想いを乗せて仙台ゴールに突き刺さった。
準決勝の鹿島アントラーズ戦ではセルジーニョの枠内シュートを身を挺してクリアするスーパープレーを見せた。浦和の背番号3は、2試合連続で守備と攻撃のヒーローとなった。
「準決勝のクリアから乗っていました。どちらかと言うと一度スーパープレーをしてしまうと『使ってしまった』と思ってしまうのだけれど、今回は『乗っているな』と感じながらプレーできました。それを結果として出せて本当に良かったです」
オズワルド・オリヴェイラ監督による選手のモチベートも関係していたはずだ。そして何より良い時も、悪い時も……あのゾーンにいつも走り込んでいたのが宇賀神である。
浦和をいろいろな形で支えてきた宇賀神友弥の諦めない姿勢が、2018年の最後、埼玉スタジアムで最高の形で結実した。来年もさらに乗って、突き抜けて行けるはずだ。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI