浦和の現状を象徴する光景。切り札の杉本健勇、韓国人選手の挑発に乗ってしまう
全北現代の選手に詰め寄る浦和の杉本健勇(14番)。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
熱くなるのはそこではなかった…。
[ACL GS3節] 浦和 0-1 全北現代/2019年4月9日/埼玉スタジアム2〇〇2/2万118人
アジアチャンピオンズリーグ(ACL)グループステージ3節、浦和レッズが韓国の全北現代モータースに0-1で敗れた。”ホームで負けない”ことが鉄則と言われるACLで、痛い1敗を喫してしまった。グループGで、浦和は1勝1分1敗の勝点4のまま2位、一方、全北現代は2勝1敗の勝点6で首位に立った。
そんななか、全北現代戦の試合終盤に投入された杉本健勇が”空回り”してしまったのは、ある意味、浦和の現状を象徴していた。
88分、3バックの1枚である岩波拓也をベンチに下げて、最後のカードで杉本が投入される。高さと強さのあるストライカーを前線に配置し、力でゴールを狙う算段だ。加えて左サイドにドリブラーの汰木康也もいる。ラスト、その二人をいかに生かすか――。
しかし結果的に、長年コンビネーションを築いてきた興梠慎三、武藤雄樹、森脇良太の右サイドにボールが集中。汰木がボールを持つ機会は限られた。杉本も左寄りのため、攻勢に加わっていけない。
そして杉本は残り時間が限られているというのに、韓国人選手の挑発に乗ってしまう。主審が割って入り、杉本に一言伝える。浦和が冷静に戦い切らなければいけない場面で、逆に相手に貴重な時間を使われてしまった。
しかも、浦和にボールがこぼれれば、主審はあとワンプレーを見てくれるだろう、という最後のロングボール。その空中戦で杉本は相手を肘打ちしてファウルを取られてしまう。そしてGKにここでも時間を使われてしまい、万事休す……。
浦和の選手からも「相手は時間の使い方も上手かった」という声が聞かれた。
もちろん、それまでにゴールを奪い切れなかったことが最大の敗因だ。攻撃的なカードを切ることでバランスを失い、全北現代にアウェーゴールをさらに加えられたくないというオズワルド・オリヴェイラ監督の中でのせめぎあいも窺えるが、結果論だが、杉本、汰木の投入がもう少し早ければ……という展開になってしまった。
ただ、いくら相手に反則まがい(突き飛ばしてくる)の行為があったとはいえ、主審の笛が吹かれていない以上、杉本はプレーに集中すべきだった。この場面、この時間帯、最も不必要な行為を続けてしまった。熱さゆえに空回りを起こしてしまったと言えるが、そんなキャリアの持ち主ではないはずだ。相手DFがどうされれば嫌がるのか、最も知っている選手の一人であり、相手は明らかに疲弊していたのだから、ワンチャンスは訪れていた可能性はあった。
そんなチグハグさは、現在のチーム状況を物語っている。チームに貢献したいという熱い想いが、上手くいかないもどかしさや焦りと化してしまう。杉本のみならず、選手の苛立ちがピッチからスタンドにも伝わってくる。例えばACLを制した2年前、どんな状況でも、ピッチで結果を残すことにのみ集中できていたはずだった。
まだ3試合。幸いなことに、グループステージの対戦一巡目は、全北現代、北京国安、ブリーラム、いずれも勝点をとりこぼしている。浦和は決勝トーナメント進出への望みがまだ十分ある(ただアウェー2試合のうち1勝は挙げたい)。
4月24日のアウェーでの全北現代戦まで、Jリーグのガンバ大阪(14日)、ヴィッセル神戸戦(20日)が組まれている。溜まっている鬱憤を晴らす、スカッとするような勝利とゴールを見せてもらいたい。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI