苦悩する鹿島新10番。安部裕葵いまだ無得点、日韓対決はスクランブル布陣が奏功せず

試合終了――。歓喜する慶南FCの選手と、悔しさを滲ませる鹿島の安部裕葵。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

周囲に気を遣っている印象。結果、特長を出し切れず慶南に敗れる。

[ACL GS4節] 鹿島 0-1 慶南/2019年4月24日/カシマサッカースタジアム

 鹿島アントラーズのMF安部裕葵がアジアチャンピオンズリーグ(ACL)グループステージ(GS)4節の慶南FC(韓国 Kリーグ)戦、0-1の63分から途中出場したものの、得点に絡むことはできなかった。試合はそのまま敗れ、グループ首位から2位に転落した。勝っていれば早くもグループ突破が決まっていただけに、もったいなかった……。

「(遠藤が下がる71分まで)僕よりもヤスさん(遠藤)のほうがイメージが豊富。そこは僕のほうが劣っていますけれど、ヤスさんが何を考えているのかを察知して、ボールを持てる選手に合わせるほうがいい。そこにたくさんボールをつけて、近くでプレーしようと心掛けていました」

 そして安部に続き、71分に遠藤から山口一真、79分に名古新太郎から伊藤翔と、ベンチに入りしていたFW登録の3人が続々と投入された。山口投入後は安部がやや後方からビルドアップに加わりながら、攻撃に厚みを加えた。安部がボランチ気味にプレーしていたようにも見えた。

「全部アドリブでやっていました、選手自身で考えて。距離感を保って、直感とイメージを共有し合いながら。途中で内側に絞りすぎて、剛さん(大岩監督)が外へ出るようにと指示はありました。その意図は分かったので、外から厚みを持って攻めようとしました」

 安部が山口と左サイドを攻略する機会もあった。ただ、鹿島の新10番は周囲に気を遣い、周りの良さを引き出すことに集中していた印象だった。

「セルジ(セルジーニョ)にはミドルを狙えるようなパスをつけていました。そこに、あと一人ほしかったです。僕が相手を引き付けることはできていたので、そこからさらに3人目がスペースを突くイメージを共有できればと思いました」

 あと一歩を詰め切れなかった。結局、そのスクランブル布陣になっても、決定的なチャンスを作り出すことはできなかった。安部も特長を出す機会はほとんどなかった。

 何より安部は今シーズン、これまで公式戦でゴールを奪えずにいる(2アシスト)。もちろん、この日のように伊藤、山口、金森とストライカータイプが前に並び、さらにセルジーニョもいれば、安部には相手マークをはがすなどチャンスメイクの役割が求められると言える。

 ただ終わってみれば、安部をはじめ、ゴールにベクトルがしっかり向いていなかった感じを受けた。もちろん、ほとんどが初めての顔合わせのメンバーで臨んだこと、加えて大岩監督の采配にも原因はあっただろう。

 とはいえ、徹底的にゴール前を固められていても、そこに挑んでいく執念があまりスタンドには伝わってこなかった。安部自身もフィニッシュ(自身であり、チームメイトであり)から逆算してプレーできていないようで、そこに今季の苦悩の要因も見て取れた。

 昨季好調時のような、あとはそこにクロスを放り込めば、必ず誰かが飛び込んでくれる――、ここに入り込めばビッグチャンスになる――と、信じてプレーしていた阿吽の呼吸が、まだ見られない。もしかすると、20歳になった安部自身もあまり考えすぎずシンプルに、目の前の相手に立ち向かっていくことが、チームにプラスをもたらすのではないかと思えた。

 そんなことは十分に分かっていることで、その先へ突き抜けるために、今もがいている段階かもしれない。鹿島のナンバー10の躍動が、チームが上昇気流に乗るためには不可欠だ。

文:サカノワ編集グループ

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