【U-20日本代表】メキシコ撃破の舞台裏。試合直前まさかの布陣に気付いたが…
U-20ワールドカップで対戦したU-20日本代表(上)とU-20メキシコ代表(下)。(C) FIFA via Getty Images.
「情報としてなかった」まさかの中盤ダイヤモンド型。
[ポーランドU-20W杯 GS2節] 日本 3-0 メキシコ/2019年5月26日/グディニャ
あらゆる面で日本が上回り勝点3を掴んだ。
U-20日本代表は5月26日、宮代大聖(川崎フロンターレ)の2ゴール、田川亨介(FC東京)の大会初得点で北中米の雄U-20メキシコ代表に3−0の快勝を収めた。立ち上がりにやや撃ち合いになりかけたものの、先制点を奪ってからは文句なしの試合運びを見せた。なぜ、完璧とも言える勝利へのシナリオを作り上げられたのか――。
メキシコ戦の日本は序盤から主体的に戦った。相手の出方を伺ったエクアドル戦の前半とは対照的と言えた。
落ち着いていたのが、相手のシステムへの対応だ。2ボランチを置く中盤ボックス型の4−4−2が基本布陣のメキシコだが、予想に反して中盤をダイヤモンド型にして臨んできた。対戦相手の分析を念入りしてきた影山雅永監督も「情報としてなかった」と、意表を突かれたのは言うまでもない。
だが、選手たちは誰ひとり慌てなかった。
キッキオフ直前に影山監督が気付いて伝え、ピッチ内の選手たちがどうすべきかを確認しあう。「ボランチの1枚を下ろせば、センターバック2枚と(3人で)守れると考えた」と瀬古歩夢(セレッソ大阪)が話した通り、ボランチの藤本寛也(東京ヴェルディ)や齊藤未月(湘南ベルマーレ)のどちらかがトップ下のライネスを見る形で対応した。
24分にロベルト・メラスの負傷交代でメキシコがボックス型の並びに変える。その変更にもすぐ気付いて対応し、その後はむしろ準備していたプランを遂行していった。
そして右MFに回ってきたライネスに対して、左SBの鈴木冬一(湘南)が粘りの守備で対応。左MFの山田康太(横浜F・マリノス)もプレスバックで援護。スペインのベティスでレギュラーポジションを掴むメキシコのキーマンである10番に、2人掛かりでも守ることを優先し、それが奏功した。
ライネスは時折左や中央にポジションを取ったが、これにも動じない。
「センターバックが競って、セカンドボールを拾うこと」を齊藤を中心に徹底。こぼれ球をライネスに渡さなかった。
守備で良いリズムを掴んだ日本は、攻撃でもショートカウンター、ロングボール、ポゼッションを上手く使い分けて攻め込んだ。相手に持たれている時間帯はブロックを作り、手数を掛けずボールを前へ運ぶ。
一方、自分たちのペースになれば、細かいパスを織り交ぜながらアタックを仕掛けた。駆け引きにも長け、2−0になって相手が前掛かりになった隙を見逃さず、宮代が3点目を奪ってみせた。
終わってみれば、3−0の勝利。メキシコとの個々のレベルの差はほとんどなかった。だが、チーム力で優っていたのは日本だった。エクアドルとの初戦で試合の進め方で課題を残していたが、それを払拭する会心の勝利を収めた。
「払った授業料を取り戻そう、と選手たちに伝えて臨みました」
影山監督は会見でそのように言った。チーム立ち上げ当初から選手たちに臨機応変な試合運びを求めていたが、3日前の戦い方を教訓に、この日、一つ結果を残した。
日本はグループステージ突破へ大きく前進した。29日に行われるイタリアとの最終戦。他会場の結果によって決勝トーナメント行きの条件は変わるが、基本的には優位な立場にはある(3位でも6グループ中上位4チームが勝ち抜ける)。メキシコ戦に続き、客観的に相手の出方を見て、主体的に守備から攻撃へと組み立てられれば、何も難しいことはない。
取材・文:松尾祐希(フリーライター)