松本×清水のPK2本はいずれも「誤審」だった!?JFA審判部が見解
松本のレアンドロ・ペレイラ。(C)SAKANOWA
「Jリーグジャッジリプレイ」で解説。”ナイスタックル”と”シミュレーション”。
[J1 14節] 松本 1-1 清水/2019年6月1日/サンプロ アルウィン
J1リーグ14節の松本山雅FC対清水エスパルス、65分に松本のレアンドロ・ペレイラ、75分に清水のドウグラスがPKを獲得し、それぞれ自身がキックを決めて1-1で引き分けた。このシーンが6月4日に更新された『DAZN』のコンテンツ「Jリーグジャッジリプレイ」で取り上げられ、日本サッカー協会(JFA)審判委員会副委員長のレイモンド・オリバー氏が解説。いずれも反則を取られた守備側の選手はノーファウルで『誤審』だったのではないか、という見解を示した。
まず、松本のレアンドロ・ペレイラが六平光成の後方からのタックルを受けてPKを獲得したシーン。VTRでゴール複数の角度のカメラから振り返ると、六平がボールへしっかりタックルに行き、その足にレアンドロ・ペレイラがかかって倒れていたことが分かる。
オリバー氏は「PKではありません。すごくいいタックルだったと思います」と、誤審であったという見解を示した。
一方、なぜ、そのような”ミスジャッジ”が起きたのか。そのシーンを辿っていくと、清水の攻撃のミスが起因であったと説明した。
「レフェリーは非常に長い距離を走って、追いかけないといけませんでした。それはなぜか。まず主審は清水のアタックに備えて、敵陣でポジションを取っていました。しかし(清水が)ミスをしたことで、主審が戻るためにスタートを切りました。松本がカウンターを開始した時、すでに20メートルほど遅れています。松本のアタックに対し、すごい距離を、すごいスピードで戻らなければいけませんでした。主審はよく走って追いつきました。ただ、(判定については)しっかりタックルに行っているので、PKではなかったと思います」
これも最近騒がれる目視の限界と言えたかもしれない。ただ松尾一主審は明らかなファウルだと認め笛を吹いていたが、ボールは一旦ゴールラインの外に出て、アウト・オブ・プレーになっている。間を置いて、副審などと確認し、あらゆる情報を整理したうえで判定を下すのも手だったかもしれない(それでもPKだという結論に至っていたかもしれないが)。
一方、ゴール前へ抜け出したドウグラスがGK守田達弥に倒され、清水がPKを獲得したシーン。こちらは守田は手を伸ばしてボールに行ったものの、届かないと判断し、ドウグラスへのタックル自体も止めた。が、残った手にドウグラスが当たってPKに――となった。ただVTRで見ると、ドウグラスが意図的に当たりに来ている感じでもあった。
オリバー氏は「この状況では、どちらかというとシミュレーションに見えます。主審として不確かな状況の時は何もしない、という選択肢もありました」と説明。そのうえで、次のようにプレーを振り返りながら解説した。
「GK(守田)は接触を避けようとしています。一方、清水の49番の選手(ドウグラス)の足の動きを見てください。わざとGKに当てようとする動きをしています。ただし、主審の角度からだと、GKが前へ出てきたことによって、(チャージが)足に当たったのだと判断したのだと思います。ただリプレイで詳しく見ると、清水の選手(ドウグラス)から接触を起こしたと見ていいでしょう」
ドウグラスがボールに向かわずファウルをもらおうとした。シミュレーションだったのではないかという考えを示した。ただし「主審は、100パーセント明らかでなければシミュレーションを取れない」と、その瞬間に判断することが非常に難しいという事情も説明した。
また、Jリーグの原博実副理事長は、自身のJリーグでの監督時代の経験も踏まえ、「微妙な判定でPKが与えられると、もう一方のチームに同じような形でPKになることがある。バランスをとるようなことはあります?」と質問を投げかけた。
オリバー氏は「そういった経験はありません。あくまで主審は誠実で正直です。観ている方はそういった感覚を持つかもしれませんが、状況によってバランスを保つようなことは一切ありません」と否定した。
おそらく、微妙な判定でPKを与えた場合、そのプレーがその試合の「判定基準」になる。そのため、選手もそういった状況を踏まえてプレーするため、一方のチームにPKが与えられる可能性も増すのかもしれない。
VAR導入まで、どのようにすれば、このようなミスジャッジを防げるのかは課題だ。一方、カウンターの応酬となった場合(しかも夏場)、どれだけ主審に負荷がかかっているか。そんな苦労も分かる今回のオリバー氏の解説だった。
文:サカノワ編集グループ