【U-20W杯 戦評】浮彫になったVARの功罪。歓喜後のゴール取り消しに「ダメージはあった」

U-20日本代表とU-20韓国代表。※日本はエクアドル戦の写真(C)FIFA via Getty Images.

やっとこじ開けたゴール。それだけが敗因ではないが…。

[ポーランドU-20W杯 決勝T1回戦] 日本 0-1 韓国/2019年6月4日/ルブリン

 U-20日本代表がU-20韓国代表に、勝つチャンスは大いにあった。ボールポゼッション率は61パーセント対39パーセント(FIFAまとめ)と大きく上回り、決定機を作り出した。とりわけ前半の出来は申し分がなく、得点を奪えなかった以外は完璧と言えるぐらい相手に何もさせなかった。

 我慢を強いられた後半も粘り強く戦い、相手ゴールを何度も脅かした。だが、日本はあと一歩のところで韓国に煮え湯を飲まされた。

 日本が韓国に0−1で敗れた。16年ぶりのベスト8入りは果たせず、影山雅永監督率いるチームはベスト16でU-20ワールドカップ(W杯)を去る結果となった。

 立ち上がりから日本が優勢に試合を進め、テンポの良いパス回しで相手を翻弄した。ボランチの藤本寛也(東京ヴェルディ)と齊藤未月(湘南ベルマーレ)が、瀬古歩夢(セレッソ大阪)と小林友希(ヴィッセル神戸)のCBコンビとともに丁寧かつ精密にビルドアップし、相手の背後に何度も質の高いパスを送り込んだ。

 その結果、5バックで挑んだ韓国の最終ラインを押し下げ、カウンターの威力を半減することにも成功した。2トップの一角に入ったイ・ガンイン(バレンシア)を孤立させた。

 前半を終わって、日本のポゼッション率は72パーセント。

「前半、(シュート)チャンスを少ししか作れなかったけど、イメージは悪くなかった」

 齊藤は振り返る。

 スコアレスだったが、チームは手応えを掴んでいた。では何故、後半に入って綻んだのか。

 その理由の一つが「VAR」(ビデオ・アシスタント・レフェリー)によりゴールが取り消された影響だ。

 日本は前半の流れを継続させ、50分にビックチャンスを作る。ルーズボールを拾った齊藤がペナルティエリア左手前からGKとDFの間に浮き玉のパスを入れた。これに反応した宮代大聖がフィニッシュに持ち込むと、GKが弾いたこぼれ球を郷家友太(ヴィッセル神戸)が蹴り込んだ。

 待望の先制弾に歓喜の輪ができた。だが、VARによってプレーをだいぶ遡り宮代の飛び出しがオフサイドとなって「ノーゴール」と覆された。

 ネットを揺らす前にジャッジが下されていれば、ダメージは少なかったかもしれない。喜ぶ必要はなかったからだ。だが、一度決まった得点が取り消された以上、感情の起伏はそれなりに生まれる。

「しょうがないという感じで、前を向いて行こうという話はしていた」

 藤本はそのように言っていたが、明らかに動揺は見られた。実際に斎藤も影響を感じたという。

「やはり、あれだけみんなでやっとゴールになったと喜びを分かち合ったあとに取り消されたので、ダメージはあったと感じました」

 もちろん、オフサイドと言われれば、確かに間違いないと言えて、審判団はルールに則り判断を下したまでだ。ただ、一連のプレーのなかで、改めてセットし直した韓国の守備を破って突き刺したシュート。相手からの抗議も一切なかったが……。このワンプレーが分水嶺となり、救われた宿敵は息を吹き返すことになった。

 日本の左サイドが狙われ、後半開始からピッチに立ったヨム・ウォンサンに背後のスペースを突かれた。セカンドボールの拾い合いでも徐々に分が悪くなり、自陣に押し込まれる場面が増える。日本は特に押し込まれると間延びし、ボールの奪いどころを見失う。

 それでも、日本は懸命に前へ出た。我慢強く守り、少ない手数でカウンターを仕掛けた。78分には途中出場の中村敬斗(ガンバ大阪)が右サイドを打開。渾身の一撃はDFにブロックされたものの、即座に宮代がボールを拾い、右足でゴールを狙った。惜しくもポストに阻まれてしまう。

 しかし直後の84分、菅原由勢(名古屋グランパス)のクリアミスから右クロスを入れられると、オ・セフンにヘッドでねじ込まれ、これが決勝点となった。

 もちろん、敗因は「幻のゴール」だけではない。

 後半の中盤以降に何度も左サイドを破られ、最後まで修正を図れなかった。ペースを握っていた前半に、もう一工夫もほしかった。ただ、VARの功罪が浮き彫りになったのも事実だ。あのシーンが、勝利を逸する要因となったのもまた紛れもない事実だ。

 帰国後、選手たちは所属クラブに戻り、再スタートを切る。韓国戦で得た経験は彼らのサッカー人生を歩んでいく上で、何事にも代え難い財産になったはずだ。

取材・文:松尾祐希(フリーライター)

Ads

Ads