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【札幌×FC東京】森重の危険なタックルが「イエローカード」で済んだ理由

FC東京の森重真人。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI

ドグソ(決定機阻止)の全要件は満たしていないため――。

[J1 24節] 札幌 1-1 FC東京/2019年8月24日/札幌ドーム

 北海道コンサドーレ札幌対FC東京の1-1で迎えた85分、札幌がカウンターからチャンスを作り、チャナティップの縦パスに、鈴木武蔵が裏のスペースへ抜け出した。しかしそこで鈴木は斜め後方から森重真人のタックルを受ける。鈴木は転倒し、笛を吹いた松尾一主審は森重にイエローカードを提示した。

 なぜ、森重にレッドカードは出なかったのか? 『DAZN』のコンテンツ「Jリーグジャッジリプレイ」で、日本サッカー協会(JFA)審判委員会のレイモンド・オリバー副委員長が詳しく解説するとともに見解を示した。

 まず、ドグソ(DOGSO=決定機阻止)にあたるかどうか。主審がドグソと判定する場合、「①ボールをコントロールできているか②ゴールに向かっているか③ゴールとの距離④守備側の選手の位置と人数(妨げる選手がいないか)」、そのすべての要件を満たしていることが条件となる。

 今回の場合、鈴木は①と②の条件を満たしている。しかし③と④に関しては、まだゴールへの距離があり、渡辺剛が鈴木の前へ入ろうとしていた。

 そのためドグソにはならなかった。したがって、森重にはイエローカードが妥当だったという。

 オリバー氏は次のように説明した。

「興味深いシチュエーションです。オフサイドかどうかという難しい判定もありました。そしてファウルについては、ドグソではありません。『相手の攻撃を止めるため』という意図のある反則でしたが、明らかに(レッドカードではなく)イエローカードです」

 さらに、次のようにも補足した。

「大きなチャンスを止めていたかどうか、あるいは無謀なタックルだったかどうか。その両方だったかもしれません。ただ鈴木選手が森重選手に怒っていたのは、ファウルの質についてでしょう。これは戦術的なファウルだったと思います。ファウルの種類が酷いから怒っていますが、だからレッドカードを出すべきだと言っているようには思いません。主審のイエローカードの判断は正しかったでしょう」

 一方、同コンテンツに出演していたJリーグの原博実副理事長は「完全に潰しに行っている。それによってゲームを止めにいっているので、本当に良くないプレーではある」とも指摘していた。

 熱くなる選手たちをいかに落ち着かせるか。主審の対応が鍵を握るが、オリバー氏は「こうした場合、主審に求められるのは選手を落ち着かせることです。怒ったことでカードの色は変わりません。このプレーは、チームのためにイエローカードをもらいにいったとも言えます」と、理解し合うことの重要性も説いた。

 決定機阻止にはあたらないシチュエーションだった――という点で、理解を深められる機会になった。では、どういった場合、どういったレベルから、一発レッドカードの対象である「著しく不正なプレー」になるのかも説明がほしいところではあった。

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[文:サカノワ編集グループ]

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