号泣のホドルフォ…一発退場の「ドグソ」は妥当か?│山形1-3長崎
長崎の呉屋大翔。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
Jリーグジャッジリプレイで上川徹氏が解説「4条件を満たしている」。
[J2 40節] 山形 1-3 長崎/2019年11月10日/NDソフトスタジアム山形
モンテディオ山形対V・ファーレン長崎の28分、長崎のDF角田誠のフィードに、FW呉屋大翔が絶妙な動き出しから最終ラインの裏に抜け出す。そして長崎のエースストライカーがペナルティエリアに入ってシュートに持ち込もうとした直前、後方から山形のDFホドルフォに手か足が触れる形で押されて転倒する。すると谷本涼主審はホドルフォのファウルで笛を吹いて長崎に直接FKを与え(ペナルティエリア外)、しかも「DOGSO=ドグソ(決定機阻止」による一発レッドカードで退場処分とした。
ホドルフォは7月21日の23節・ファジアーノ岡山戦(●0-1)以来、実に約4か月ぶりに掴んだリーグ戦の出場機会でもあった。加えてJ1昇格に向けて落とせない大事な一戦でもあっただけに……22歳の若きDFはピッチの外に出ると、膝をついて号泣した。
このシーンが、疑問の判定について議論と検証をする『DAZN』のコンテンツ「Jリーグジャッジリプレイ」で取り上げられ、日本サッカー協会(JFA)の上川徹トップレフェリーグループシニアマネジャーが詳しく解説をした。
まず「決定機阻止=DOGSO[ドグソ](Denying Obviously Goal Scoring Opportunityの頭文字) 」の4条件を改めて整理したい。
「DOGSO」が成立するのは、下記4つの条件がすべて揃った時だ。
攻撃側の選手が――
1)ボールをコントロールできているか
2)ゴールに向かっているか(プレーの方向)
3)ゴールとの距離
4)守備側の選手の位置と人数(GKまで妨げる選手がいないか)
ここでテーマになったのが、2)のプレーの方向だった。
番組に出演したタレントの平畠啓史さんは当初、ゴールに向かっていないのではないかと指摘したものの、ゴール裏からのカメラを見ると、やや外側に体は向いているがゴールエリアの幅で、絶好のシュートエリアに入ろうとしていたことが分かる。
「確かに引いた映像ですと、ゴールから離れて行っているように見えます。しかし、ゴール裏からの映像だと、ゴールエリアの幅でファウルが起きています。プレーの方向を含めて、(ドグソの)4条件を満たしていると考えていいと思います」
つまり、完全にゴール方向に体が向かっていなくても、「方向」の条件も満たされるということだ。
「ただ、もちろんホールディングのように明らかなファウルであれば、皆さん納得すると思います。今回それほど悪質とは言えない反則で、『退場は厳しいのではないか』というご意見は、すごく理解できます。悪さは感じません。ただルールでは、退場になっても仕方ないかなと思います」
つまり、ファウルの質で大小を付けるのではなく、条件が満たされていればドグソで一発退場になるということだ。
一方、出演していたJリーグの原博実副理事長は、「ただ、本来、ストライカーはそこでこそ勝負するもの。ゴールを奪ったほうがより手っ取り早いのではないか。そこで、ファウルが与えられ、さらに退場になってしまうというのは、もやもや感が残ります」とストライカー目線で指摘。本来は選手の危険を避ける、守るための「ルール」であるはずだが、運用にばかり目が向けられてしまう(世界的ではあるが)傾向に疑問を投げ掛けていた。
今後はゴール前でファウルになると同時に、ドグソで退場となる――。今回はJ2であったが、来季からVARが採用されるJ1では、先のルヴァンカップ決勝での谷口彰悟の時のように、より詳しくチェックしたうえで退場となるケースは間違いなく増える。
山形は痛恨の1敗を喫して、4位に後退した。DFにとって受難の時代が到来するのだろうか……。
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[文:サカノワ編集グループ]