【日本代表】対照的だった両監督の記者会見での「具体性」
ベネズエラ戦に臨んだ日本代表。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
ベネズエラ代表が喜んでいたのは「結果」に加え、準備からのプロセスが「成功」に結びついたこと。
[キリンチャレンジカップ] 日本 1-4 ベネズエラ/2019年11月19日/パナソニックスタジアム吹田
日本代表がベネズエラ代表に前半だけで4失点を喫し、1-4という大差で敗れた。前半だけで4失点を喫したのは、何と1923年(大正12年)以来である。しかも、明らかな力負けで、ベネズエラの個と組織に、ことごとく完璧に攻略されて、ゴールを許した。
国内組の奮起も期待された。その期待も打ち砕かれる痛恨の1敗となってしまった。
そして、この試合後の両監督の記者会見もまた対照的だった。
国を代表する、クラブを代表する、そういった立場の指揮官が、近年、特定の誰かを傷つけるような発言をすることはほとんどなくなった。この日の両監督もまた紳士的に、記者の質問に丁寧に答えていった。日本の森保一監督はその人柄が表れるように、関係するあらゆる立場の人たちに配慮して言葉を選ぶ。誰かを不快にするような物言いは、聞いたことがない。
ただ、この試合後、より言葉に「説得力」があったのは、ベネズエラのラファエル・ドゥダメル監督だった。将棋の「感想戦」のような位置づけになるのだろうか。ドゥダメル監督はどのように日本対策を行い、試合に臨んだのかを、詳しく答えていった。
「日本のパスを活用したビルドアップなど、組織的な戦いをさせないため、高い位置からのプレスでそれを遮る戦いを試みました。それは効果的だったと思います。
相手が狙っている普段の戦い方をさせない。そういったプレーからボールを奪うことに成功して、ゴールを決めることもできました。前半だけで4点を奪い、ほぼ試合を決定づけることができました」
戦略として、まず相手の特長を知ること、その対策を講じること、そして練習で落とし込み、試合を迎える――というサイクルでこの試合を迎え、見事に奏功したということだった。
4-1というスコアがまず注目を集める。ただ、ベネズエラとしては、そのように対戦相手の情報を得るスカウティングの段階から、選手たちへの落とし込み、そして選手たちが実践して結果を残した――そういった準備段階から本番(試合)まで、プロセスを含めた「成功」に、確かな手応えを得ていたのだ。
一方、森保監督のコメントは対照的だった。そして具体性を欠き、抽象的だった(ただし、監督が赤裸々に、常に具体的に話をするほうが良いとは言い切れないが)。
チーム作りの過程で、いちいち手の内を明かす必要はないとも言える。ただ、今回の試合に向けた準備という点では、明らかにベネズエラのドゥダメル監督の話のほうが説得力があった。
実際、森保監督は「上手く結果につながらなかったのは、私が監督として準備の部分で、何か問題があったのではないかと考えています。トレーニングの内容で言いますと、相手の厳しいプレッシャーのなか、攻撃の形を作る連動の練習はしました。ただもっとクオリティを求め、試合よりもさらに難しい形でトレーニングすることが大事になってくると思っています」と語った。「準備段階」に問題があったのではないかと指摘をしていた。
U-22日本代表対U-22コロンビア代表戦の2日後、このベネズエラ戦が組まれた。準備期間は確かに限られただろう。が、結果的には間違いなく、準備の面でも、ベネズエラに劣っていたと言える結果に終わった。
「ビルドアップ、シュートまでつなげるパスの連動、クオリティの部分が少し足りず、相手につけ込まれてしまいました。守備ではボール保持者に対する間合いを詰めることが少し遠く、プレッシャーをかけられない中で失点を重ねたところは反省点であり、今日の敗因だと思っています」
「世界の舞台で戦っていくためのインテンシティとプレーのクオリティを選手たちに働きかけ、さらに試合で選手たちが肌で感じるような経験をさせていきたい。代表の経験を持ち帰って、自チームでさらに上げるようにトライしてほしいと思います」
森保監督はそのように振り返った。そういったコメントはやや抽象的で、ドゥダメル監督のように「高い位置からのプレス」「相手の特長を消す」といったキーワードが響いてこなかった。
目の前のこの試合にいかに勝つか――。両監督の記者会見を聞く限り、その準備の段階から「日本が負けていた」と感じた。そのような現実を突き付けられる完敗となってしまった。
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[取材・文:塚越 始]