【U-17女子日本代表】東京五輪の「先」を担うリトルなでしこが世界へ始動
写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
野田にな「少しでも自分が成長した部分、逆に成長していない部分も見つけ、優勝という結果がついてくれば一番いい」。
4年に一度のオリンピックイヤーの2020年、しかも自国開催の東京オリンピックを前に、なでしこジャパンの選手選考も佳境を迎えつつある。一方、2020年に世界へ挑むのは、なでしこジャパンだけではない。U-17女子ワールドカップに、「リトルなでしこ」ことU-17日本女子代表が臨む。
今年11月にインドで開催される本大会に向けて、U-17日本女子代表候補のキャンプが10日からJヴィレッジで行われた。
初日はミーティングのあと、GPSを装着してのフィジカルチェックからスタート。パワーみなぎる選手たちは、その後も精力的にメニューをこなしていった。
トライアングルパス、二人一組のパス……。すべての練習でパススピードとポジショニングが重視され、ゲームをイメージしながら“自ら考えてプレーする”意識付けが進められた。
この年代は飲み込みが早く、まさにスポンジのよう。貪欲に目を見張るほどのスピードでサッカーを吸収していた。
そんな可能性を秘めたU-17日本女子代表を指揮するのは狩野倫久監督だ。2015年以降、ナショナルトレセンやエリートプログラムでの指導を通じて、日本女子サッカーの育成年代に明るい。
「シチュエーションのなかで最低限の提示はしますが、そこに加えていくのは選手の判断です。(ボールを奪いに、あるいはゴールを狙いに)行けるのか行けないのか。その時の自分自身の自信も含めて判断する必要があります」
狩野監督の言葉は、そのままピッチ上の指導で見ることができる。
プレーを止めても、「正解」は簡単には示さない。まずは選手が考える。
受け身のままでは置いてけぼりを食ってしまう。そのため選手たちも緊張のなか、言葉で伝えようとする。
そして、行けるか行けないかの判断スピード――。それはなでしこジャパン(日本女子代表)の高倉麻子監督が常にピッチ上で選手たちに求め続けていることでもある。
この世代からその視野を持つ必要性を説き、しかも、それを実践しようとしているところに進化を感じる。なでしこジャパン、U-20、U-17、各カテゴリーの監督同士の意見交換により、一貫した同じビジョンを共有しながら取り組んでいることの証左でもあった。
また、ピッチ上で選手たちが一つひとつのメニューに飽くことなく楽しそうに取り組む姿の陰には狩野監督の秘策がある。
「こうしたかったんだよな? と言いますね。そうすると、分かってもらえているという納得感が生まれます。そこで、もう一個こういうのもあるぞとか、こういうふうにしてみたら? っていうのボソッと言ってみたりとか(笑)」(狩野監督)
そのボソリとこぼす言葉で、選手たちのやる気が俄然と上がっていくのだ。
今回のキャンプには、昨年のU-16アジア女子選手権の優勝メンバーと新規メンバーとが入り交ざった23人が招集された。
まだぎこちない空気が漂っていた序盤から、何とか雰囲気を盛り上げようと奮起していたのが、昨年のチームでキャプテンを任されていたGK野田にな(日テレ・東京ヴェルディメニーナ)だ。
「アジアの時にいた選手が中心になりながら、もっとコミュニケーションを取れるように練習でも盛り上げていかないと」
そのように語るしっかり者の野田も、昨年のU-16アジア女子選手権決勝で対戦した北朝鮮代表のプレッシャーの速さに最後まで苦しめられた(日本が2-1で勝利)。そこで彼女は相手GKとの「差」に驚いたという。
「身長はそこまで変わらないのに、キック力や思い切りの良さ、パワーの部分では自分はまだまだ足りないと思いました」
同年代だからこそ、よりリアルに感じ取れる差や課題もある。それを手にできた野田はどこか満足げでもある。何より今度は「世界」が待っている。
「ワールドカップは憧れの舞台。まだ想像もつかないですけど、1年間やったことをすべて出せるような甘い大会ではないと思います。少しでも自分が成長した部分、逆に成長してない部分も見つけられて、それで優勝という結果がついてくれば一番いいと思います」
野田はそのように目標を掲げる。
彼女たちの未来は今、可能性だけが広がっていない真っ白な状態だ。狩野監督のもと、どのように走り出していくのか。今から11月のU-17女子ワールドカップ本番が待ち遠しい。
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[取材・文:早草紀子]