J2の町田対甲府戦、ハンドが見逃される。VARがあったら?
FC町田ゼルビアのサポーター。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
マソビッチのヘッドが藤田の腕に当たる。主審、副審ともに確信を持てず?
[J2 2節] 町田 0-0 甲府/2020年2月23日/町田GIONスタジアム
FC町田ゼルビア対ヴァンフォーレ甲府の65分、問題のシーンがあった。右サイドからの平戸太貴のクロスに、FWマソビッチがジャンプヘッドでシュートを放つ。するとその瞬間、目前でジャンプしていた甲府の藤田優人がブロックする。しかし映像で見ると、明らかに藤田の広げた右腕にボール当たっていたのだ。
藤田は決して故意とは言えないが、完全にシュートコースを防ぐ形で、広げた腕でボールをブロックする形になっている。しかし、小屋幸栄主審はハンドのファウルを取らず、コーナーキックを選択した。副審を含めて、手にボールが当たったことが確認できなかったのか、あるいは、手にボールが当たったもののファウルを取らなかったのか。
このシーンがDAZNの『Jリーグジャッジリプレイ』で取り上げられ、小幡真一郎JFA審判1級インストラクターが審判の目線で詳しく説明をしてくれた。
まず、VTRで見る限りでは、ハンドのファウルが妥当だったのではないかという見解を示した。
「(スライディングなどに行って)地面で支えている手にボールが当たった場合はハンドの対象にはなりません。ただし、(ジャンプをしたあと)下りてきている時であれば、現在はハンドの対象になると思います」
小幡氏はそのように説明。体を不自然に大きく見せている、あるいは肩より高く上げている腕にボールが当たった場合は、現行のルールでは、自動的にハンドになる。結局どこからが「故意」かの判断は難しく、それに該当するだろうということだ。
また、主審、副審ともに腕にボールが当たっているという確信を持てなかったため、笛を吹けなかったのではないかと示唆した。
そして、小幡氏は副審の心理として、シュートが打たれると次はゴールラインを割るかどうかにフォーカスするため「副審は(シュートの)ボールの起点と終点を見ようとします。目を真ん中(途中)に置くのは難しく、加えてトンネルを出る時の現象のように、影から明るいところへボールが移っていることも影響したかもしれません」と話した。
結果的に、主審、副審ともにハンドであるという確証を得られなかったため、このファウルは見逃されたということだ。
そしてJ2では採用されていないが、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)があった場合、「ハンドのファウルになっていたでしょう。PKは(オフサイドなどのような)ファクトとは異なるので、オン・フィールド・レビューになっていたはずです」と説明があった。また、DOGSO(ドグソ)によるレッドカードにはならないものの、藤田にはイエローカードが提示されていた可能性が高かったということだ。
2020シーズンは、もしかするとVARが導入されたJ1以上に、J2での判定がよりクローズアップされるかもしれない。同時に費用面など課題は多いものの、J2でのVAR採用も論点の一つになってきそうだ。
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[文:サカノワ編集グループ]