名古屋グランパスの事例はまさに「感染経路不明」。三鴨廣繁教授が3つの提言
新型コロナウイルス対策連絡会議「専門家チーム」の愛知医科大学、三鴨廣繁教授。(C)SAKANOWA
「今回の事例をぜひ参照に、日本のスポーツ文化を守るため、さらに前進できれば」
一般社団法人日本野球機構(NPB)と公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)が合同で立ち上げた「新型コロナウイルス対策連絡会議」の第12回会議がオンラインで7月27日に行われ、名古屋グランパスのチーム内に同ウイルスの感染者3人が確認されたことを受けて、26日のサンフレッチェ広島戦が中止になった件について、今後の対策などが協議された。また政府方針に基づき、8月いっぱいまで観客数は会場の半分あるいは5000人以下の制限下で行われることも確認された。
名古屋では今回、24日に宮原和也の同ウイルス陽性反応が確認され(濃厚接触者はなし)、25日に全選手・スタッフのPCR検査を実施。そのすべての結果が出たのは午後10時頃で、渡邉柊斗(別メニュー調整を続けていた)とスタッフ1人の「陽性」が確認された。そこから保健所や行政と連絡を取り、2人の濃厚接触者がいないかどうかの確定作業に入った。
しかし、その作業を終えて判定できるのは早くても26日夕方になる。そのため今回、広島戦の中止が決定した。
今回の対応に中心的に関わった同会議の専門家チームの一人である愛知医科大学の三鴨廣繁教授は、次の3点を「今後の参考、改善、また検討していただきたいこと」と提言した。
「宮原選手が新幹線で帰名された際、(ソーシャルディスタンスを保って)隣に座っていた人物が、少しお腹が空いたということでお弁当を食べられたそうです。これについて、保健所ではなく(マスクを外すため)名古屋市の行政から『これは濃厚接触になることも、あり得るのでは?』という指摘を受けました。結果的に濃厚接触者リストには挙げられなかったものの、選手・スタッフの移動の際の食事についても、可能な限り避けていただくことが、チーム、リーグを守る意味で重要ではないかと示唆される事例となり、指摘させていただきました」
そのように、移動中の食事に関する具体的な意見があった。また、試合前日にトップチームの選手・スタッフなどに陽性反応が出た場合の対応についても、ガイドラインの再考や追記を求められた。
「試合が中止になった最大の理由は、保健所の濃厚接触者のリストアップの作業のためでした。行政側ももちろん一生懸命に作業していたわけで、今回、この事例を受けて進言しました。具体的にPCR検査の結果が判明したのが(25日の)夜の10時で、そこから即座に保健所に連絡していますが、濃厚接触者のリストアップは翌日(26日)から始めることになります。翌日の試合に間に合わないことは、今後も十分あり得ます。行政のリストアップが遅れた場合に試合をどうするかは、マニュアル(ガイドライン)には記載がないので、追記すべきではないかと申しました」
そして、今回名古屋は自主的なPCR検査を繰り返し実施し、安全であることを示す努力をしている。その点についても、検査方法についてマニュアル的なものがあると、スポーツ界全体にとって意義あるものになるのではないかと話があった。
「名古屋グランパスさんは8月1日の試合開催に向けて、自主的なPCR検査を、27日と29日の2回実施すると発表しています。これはチーム、選手、リーグ、そしてスポーツの文化を守るためでもあります。ただ、プロ野球とJリーグが、こうした自主的なPCR検査の方向性について示されているわけではないので、今回の事例を参考にして、ぜひ(マニュアルへの記載など)検討に入っていただければと申しました」
人類が初めて直面するウイルスとの闘いであり共存のための模索は続く。何より感染経路が不明であることが、事態をより深刻にし関係者の不安をも増長させる。ただ三鴨教授はこうした機会と正面から向き合うことで、「今回の事例をぜひ参照に、プロ野球、Jリーグが日本のスポーツ文化を守ることに、さらに前進できれば幸いに思います」と呼び掛けていた。
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[取材・文:塚越始]