反町技術委員長が指導者ライセンスの賛否に見解「選手気分のまま監督をやってもいけない」
内田篤人が「ロールモデルコーチ」の肩書であることも改めて説明している。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
JFA公式サイトのコラム「サッカーを語ろう」を更新。内田篤人ロールモデルコーチ、特別な「感謝状」にも触れる。
日本サッカー協会(JFA)の反町康治技術委員長が10月30日、JFA公式サイトの連載コラム「サッカーを語ろう」を更新し、第3回「指導者への思い」を掲載した。
そのなかで、日本代表(SAMURAI BLUE)に初招集された選手からお世話になった指導者に贈られる特別な「感謝状」とペナントについてのエピソードが紹介されている。また、元日本代表の本田圭佑らの発言によって物議を醸す日本の「指導者ライセンス」について、アルビレックス新潟、北京オリンピック日本代表、湘南ベルマーレ、そして松本山雅FCを率いた反町技術委員長は「賛否両論いろんな意見があっていいと個人的には思っている」とする一方、「選手と監督はまったく別の仕事であり、監督気分で選手をやってはいけないし、選手気分のまま監督をやってもいけないからだ」と見解を示している。
反町技術委員長は「指導者のライセンスをめぐっては、さまざまな意見があることを承知している」と言う。そして鹿島アントラーズを引退した内田篤人が『ロールモデルコーチ』の肩書でU-19日本代表の合宿に参加しているのは、指導者ライセンスを持っていないためであると説明。「そんな内田でも正式にコーチになろうとしたら、ライセンスをこつこつ取得していく必要がある。それを不思議に思う人がいるのも分かるし、賛否両論いろんな意見があっていいと個人的には思っている」として、自身の考えを示す。
「Jリーガーで初めて現役選手のうちから指導者養成コースに通い、最初に取得したC級を足場にバルセロナに留学したり、高校のチームを指導したりしながらS級にたどり着き、36歳で当時J2だったアルビレックス新潟の監督になった我が身を振り返ると、本気で監督の仕事をするのであれば、取るべきライセンスはきちんと取った方がいいと断言できる。選手と監督はまったく別の仕事であり、監督気分で選手をやってはいけないし、選手気分のまま監督をやってもいけないからだ」
また、ライセンス制度について、「ライセンスを取らせるのが目的ではなく、日本のサッカーをよりよくするための指針や方向性を、広くコーチたちに伝えることが最大の眼目なのである」と強調。「ライセンスを取得してもそこはスタート地点に過ぎない。取ってからどうするかが大事で、しっかり学び続けなければならないし、学ぶことをやめたら指導をしてはいけないと言われるのも本当のことだ」と、ある意味“監督道”が続くのだと言う。
そのうえで反町技術委員長らしく、「精進を重ねて現場を持てても成績が悪いとたたかれる。プロチームの監督になると、そのたたかれ方が半端ではない。それに耐えていくには相当なメンタルの強さがいる。そして、こればっかりは監督にならないと鍛えようがない」と、経験者らしい本音を漏らしている。
「経験不足の監督が陥りがちなのは、自分の理想に当てはめようとして失敗するパターンだろう。シャビやイニエスタがいないのに、頭でっかちなままバルセロナのようなスタイルを目指しても、形にするのは難しい。やがて理想に現実が追いつかないまま任を解かれる。Jリーグで経験値のあるベテランの監督が重宝されるのは、彼らには現実と折り合う力があるからだ」
もちろん、そのあたりの志向にもまた賛否があるだろう。
いずれにせよ、反町技術委員長も現状のライセンス制度で良いとは決して思っていない。もっと“職業・プロサッカー監督”が出てくる体制作りの必要性も唱える。
「ドイツから若く優秀な監督が次々に出てくる。RBライプツィヒのユリアン・ナーゲルスマン監督は28歳でブンデスリーガ1部のトップチームを率いた。日本はそういう監督がなかなか表舞台に出てこられない。若くて勢いのある監督を輩出したいと思っているのだが……。これも私に与えられた宿題の一つかもしれない」
ちなみに教育システムの差異も関係しているが、日本ではD級・C級が18歳、B級が20歳以上で受講可能だが、ドイツはB級相当の受講が16歳から認められている(C級取得のための受講時間も日本より長い)。
反町技術委員長は現在のポジションにいる間に、果たしてどれだけ“改革”を進めることができるだろうか。
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[文:サカノワ編集グループ]