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清水の選手が王者川崎を「ガード・オブ・オーナー」で祝福。儀式発祥の母国でも議論に

清水エスパルスのサポーター。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

「オーマイゴー」昨季プレミアリーグ覇者リバプールのクロップ監督は笑って、驚いた――。

[J1 31節] 清水 2-2 川崎/2020年12月5日/IAIスタジアム日本平

 J1リーグ清水エスパルス対川崎フロンターレの選手入場の際、清水のイレブンが両サイドに分かれて「花道」を作り、そこを今季リーグ覇者の川崎フロンターレの選手たちが通って祝福を受ける「ガード・オブ・オーナー」が行われた。スタンドからも拍手が送られた。

 激動の2020シーズン、リーグ新の12連勝、歴代最多勝点などさまざまな記録を打ち立てた川崎の「偉業」をたたえて、Jリーグでは初めて行われた。

 まず、清水の選手たちが左右に列を作り、ソーシャルディスタンスも取りながら、そこを川崎の先発メンバーの選手たちが通り、祝福の拍手を受けてピッチに向かった。

 イングランドのプレミアリーグでは早々と優勝を決めたチームがアウェーに乗り込んだ際、儀式的に行われてきた。

 ただし、プレミアリーグでもこの伝統については議論が起きている。昨季初めてこの祝福を受けることになったリバプールFCのユルゲン・クロップ監督は、優勝決定直後に宿敵マンチェスター・シティから祝福を受けることになるという記者からの質問に、「そもそもそれはどういう意味があるんだ?」と逆に問いかける。

 名誉の守護のもと、チャンピオンがピッチに登場するという儀式です――。それを聞いたクロップ監督は笑って、「シティがやってくれるんですか?(記者:今後シーズン終了まで、すべてのチームで起こりえます)ハハハ。私たちはチャンピオンであっても、ただ勇敢に変わらず戦うだけですよ」と答えている。

 別の取材では、過去に「ガード・オブ・オーナー」でリバプールの選手がチェルシーFCの選手を祝福しているシーンを見せられて、「オーマイゴー」と絶句。ドイツ・ブンデスリーガで以前に行われていたかどうかは定かではないと言い、ドイツ人指揮官は「素晴らしいことですが、私たちが全ての試合で勝とうとしていることに対し、それはあまり意味を成しません。ピッチに向かうのは祝福されるためではなく、サッカーをプレーするためであり、全力でただ勝ちにいくだけです」と、意に介していなかった。基本的にクロップ監督は挑戦者というスタンスを貫いているだけに、ちょっとこそばゆく感じたようだ。

 しかも昨季はマンチェスター・シティのベルナルド・シウバがその花道には参加したものの拍手を送らなかった。そんな形だけの行為に意味はあるのだろうか? と波紋を広げた。

 もちろん今回の清水は、100年に一度と言われた新型コロナウイルスの影響を受けてJリーグが一丸となって乗り越えたシーズンである「2020年の王者」を称える――という意味合いが大きかったに違いない。

 また、サッカー王国である静岡県静岡市のホームとする「清水」が行ったことにも、大きな意味がある。

 とはいえ日本らしく右へ倣えで実施されていくのであれば、あまり価値や意味を持たなくなっていくかもしれない。今季は降格ルールがないことも関係している。あるいは新たな祝福の仕方があるのか? そのあたりは今後も議論が起きそうだ。

 清水の平岡宏章監督は試合後のフラッシュインタビューでこのガードオブオーナーについて聞かれると、「たまたま私が考えていたことと運営側の考えが一致しました。しっかりと運営のほうが考えていたので良かったです」と語った。

 川崎はこのあと、12月12日にアウェーでサガン鳥栖と対戦する。

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[文:サカノワ編集グループ]

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