【コラム】来季J2「昇格プレーオフ」の是非を考える。2チーム自動昇格が妥当、ただクラブ社長の立場だったら…
昨季J2リーグ4位の徳島は昇格プレーオフを勝ち上がり、J1参入決定戦に臨んだ。しかし湘南と1-1で引き分け、昇格ならず。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
J1への昇格枠「2」。1位自動昇格、2位はプレーオフで決定する案を議論。
2021シーズンのJ2リーグは、昇格2チーム、降格4チームというイレギュラーなシーズンになる。とりわけ今季に続き昇格が「2枠」になることについて、その2枠目の確定方法が決まらずにいる。Jリーグは来週中にも最終決定したいという。
優勝チーム(1位)は文句なしで、自動昇格が決定だ。一方、例年の「2.5枠」より少ない「2枠」しかないのであれば、今季のように「2位・自動昇格」ではなく、2位から5位によるプレーオフを実施してみてはどうか――という案が議論されているという。一部(多く?)のJ2クラブの代表が主張しているということだ。
「2チーム・自動昇格」であると、中位以下のチームのモチベーションが持続せず、それはリーグの盛り上げをも阻害する、ということだ。
とはいえ、これまでJ1の自動昇格の権利が与えられてきた2位チームからすれば、そんな救済システムは不要であり論外である。もちろん、現時点では、どこが2位になるかも分からないことだが。
Jリーグは基本的には「2チーム自動昇格」で決定したい意向である。
今季に続き2021シーズンもコロナ禍での開催になる。現状であれば様々なノウハウや知見を得たことで試合開催については継続できそうだ。ただしトップチーム内でクラスターなどが起これば、再び日程が狂う可能性は残る。プレーオフ中にそういった問題が生じる場合もあり得る。
2位チームが背負う「不公平感」を考えれば、シンプルに2チーム自動昇格が妥当だ。
記者個人的にも「2チーム自動昇格」で、何も問題ないと思う。
しかし、もしも自分が実行委員会に出席しているJ2クラブの社長だったら、間違いなく「プレーオフ実施」に賛成だ。むしろ、プレーオフができなければ、クラブにとって死活問題――というぐらい開催実現を訴えるに違いない。
とはいえ昇格の枠数を「2枠」と決めた時点で、それは「自動昇格」を実質的に認めたものと捉えられて仕方ない。プレーオフ実施を訴えるならば、昇格枠を決定する段階で「3」ないし「2.5」の妥当性を主張すべきだった。
3位から6位が争う昇格プレーオフは、多くのファンの理解を得て支持されてきた(昨季までのJ1昇格決定戦が、J1・17位のチームに突如、圧倒的優位なアドバンテージが与えられている点は見直されるべきだが)。
ただし、そこに2位チームをある意味巻き添えにするのは、一般的に見れば理不尽と言える。
例えば来季、デッドヒートを繰り広げた末、2位チームがプレーオフに回ることになる。対するのは“ボーナスチャンス”の挑戦権を得た3位、4位、あるいは5位のチームである。どう考えても、ほぼノープレッシャーのチームに対し、その挑戦を“受ける”立場であり(1位になれなかったという)敗者という状況にもある2位チームが、圧倒的に不利だ。むしろ2位が貧乏くじになる構図だ。
2016年のチャンピオンシップ。年間勝点1位の浦和レッズは、鹿島アントラーズに「年間優勝」のタイトルを逆転で奪われた。が、CSの2試合トータルスコアは2-2。この時、1年間の成果よりも、この2試合の「アウェーゴール数」に重きが置かれて、大きな矛盾を生んだ。鹿島がそのルールをしっかり生かしてタイトルを手にしてみせたのだが、盛り上がりを優先することの副作用と代償も大きかった。
人為的な“盛り上げ装置”は作り出そうと思えば、いくらでも考案できる。しかし勝負ごとでの特別ルールは、分かりにくさとともに矛盾や不平等を生む。「かんけり」や「ケイドロ」でもっと面白くしようと特別ルールを設けたはずが、なんだか冷めていってしまう感覚と同類だ。
いやいや、そもそもがエンターテイメントではないか。ファンとともに盛り上がってこそだ。という声もまたある。しかし、上記のような理由から、年間を戦い切って2位になったチームまで組み入れてしまうと、どこが勝っても、負けても、結果的に後味の悪さが残る未来も想像できる。
もちろん議論は尽くすべきで、新たなシステムが決定するのであれば支持したい。ただプレーオフを実施したいのであれば3位から5位、6位による賞金争奪戦のような別枠のイベントにすればいいのではないか。そこに「2位チームの昇格の権利」を、特別奉仕品のように安易に扱って論じるべきではないと感じる。Jリーグにも守るべきプライドがあるはずだ。
注目記事:【Jリーグ】2021年開幕は2/26、最終節は12/4or5。来季J1は2チーム増20チーム制
[文:塚越始]