【湘南】高山薫がスタメンを外れた時に考えること――
湘南で通算7年目を迎えた高山。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
名古屋戦でのスプリント数39回は断トツ1位。
湘南ベルマーレの高山薫が3月11日の名古屋グランパス戦で、今季リーグ戦初先発を果たした。スコアレスドローに終わった一戦に、右ウイングバックとしてフル出場。アップダウンを繰り返して球際に厳しく当たりに行くなどハードワークを怠らず、最後まで拮抗を保った。
昨年3月25日のJ2・ジェフユナイテッド市原・千葉戦で右ヒザ前十字靭帯を損傷し手術を受けて全治8か月と診断された。そこから懸命のリハビリを乗り越えて、シーズン終盤に何とか戦列復帰を果たす。2018年の完全復活に向けたシナリオは、しっかりと描けた。
とはいえ、高山にポジションが確約されているわけではなかった。チームの象徴が不在であっても、2017年の湘南は文句なしの強さを見せてJ2優勝を達成。中心メンバーは自信を付けて一回り大きく成長を遂げ、さらに2018年に向けて松田天馬ら活きのいい新戦力も加わった。
今季、高山は開幕からベンチスタートが続いた。1節・長崎戦(2-1)は途中から16分の出場、2節・川崎戦(1-1)は出場機会を得られなかった。
そして3節、ついにスタメンの座を掴んでみせた。試合前の練習、湘南イレブンの先頭に立ってスタンドに挨拶をする背番号23の姿があった。BMWスタジアムでは以前からの見慣れた光景ではあったが、2018年初めて見せたその雄姿に、スタンドからは温かい拍手が送られた。
スタメンから外れたとき、高山は「それは、とても悔しいですよ。本当に悔しいです」と表情は変えず少し強い語調で言った。ただプロ8年目、湘南在籍7年目はチーム最長であり、今年30歳を迎える。それだけに、チーム状況も、ベンチスタートでの自身に求められる役割も、すぐに把握しスタンバイしてきた。
その悔しい感情をどのように自分の中で受け入れ、解決させてきたのか。
「それは自分でもいまだによく分からないところでもあるんです。ただ、だからこそ試合に出て結果を残すしかないと、そこにすべてを向けています。いろんな感情も、試合のピッチでしか表現できないものだと思っています」
名古屋戦での高山のスプリント数39回。両チームを通じて、断トツの1位だった(2位は名古屋の秋山陽介27回、3位は松田天馬の22回)。試合中、誰よりもその一瞬のスピードに懸けて戦っていた。
しかし一方、高山は勝利に導けなかった責任も感じている。チームのために走るとはどういうことなのか? いかに仲間を助け、いかにゴールを狙うのか……。ピッチに立つ責任と喜びを噛み締めながら、永遠のテーマと向き合い続ける。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI