【鹿島】沖悠哉が語った11メートルのドラマ。豊田陽平の強烈PKを完璧に止める
鹿島の沖悠哉。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
「昨年からPKを止める機会がなかったので、ここは自分が助ける番だと強い気持ちで臨めました」
[ルヴァンカップ GS1節] 鹿島 3-0 鳥栖/2021年3月3日/カシマサッカースタジアム
ルヴァンカップのグループステージ1節、鹿島アントラーズのGK沖悠哉が後半開始早々、豊田陽平のPKを止めるビッグセーブで絶体絶命のピンチを切り抜けた。この試合の分水嶺になった場面であり、その後、PKを献上した和泉竜司が得点を決めるなど鹿島が3-0の勝利を収めた。
1-0で折り返した直後、和泉のペナルティエリア内のタックルがファウルとなりPKに。キッカー役を務めたのは先発起用に燃える、鳥栖のレジェンドである豊田だ。
「後半早々、先日のリーグ戦の試合同様、気を引き締めようという思いが強すぎて、(和泉)竜司くんのプレーになってしまったのかなとも思いました。ただ、そこに対して自分がどのようにアプローチするのか、どのような立ち振る舞いをするか、そこはずっと意識してきました。なかなか昨年からPKを止める機会がなかったので、ここは自分が助ける番だという強い気持ちで臨むことができました」
ゴールラインからペナルティマームまでの距離は11メートル。味方が時間を作りながら、そこで沖は自身の間合いに持ち込む。そして35歳になるストライカーの渾身の強烈なショットに対し、右に飛んで弾き出してみせた。ドンピシャのタイミングだった。
沖はそこでの駆け引きについて振り返る。
「もちろん毎試合スカウティングをしていますが、最後は自分の決断です。思い切って飛んだ方向にボールが来てくれました。助走してきたところで、スピードや角度などいろんなことを踏まえ、飛ぶ方向などを決めています。それまでは決めていません。そこが今日は一致しました」
観客数は限られるものの、そのなかでホームのアドバンテージを最大限に生かし、最後は迷わず右に飛び、豊田の渾身の一撃を止めてみせた。
そしてガッツポーズも飛び出した。沖は「PKを止めたことよりも、みんなでピンチを潜り抜けたことに意味があると思います。決められていたら、また苦しい状況になっていました。スカウティング、監督、コーチ、フォローしてくれたチームメイト、そういうったみんなのお陰で自分もプレーできていて、感謝の気持ちを持ちつつ……、試合中にガッツポーズすることはあまりないことで、それぐらい自分にとっても意味のあるセーブでした」と、少し照れた。
そして鹿島の新守護神は改めて「いろんな要因が重なってのPKストップ。決して自分一人ではない、みんなの力で止めることができました」と、鹿島の総力の一つが結実した場面だったと強調し、感謝を忘れなかった。21歳の沖がまた一つ自信をつけ、進化を遂げた。
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[文:サカノワ編集グループ]