U-16日本女子代表の「絵具効果」。有町紗央里と共に独特の“色”を追求
U-16日本女子代表の吉岡心。(C)JFA
U-17女子W杯に向けて始動。
U-16日本女子代表が4月12日から16日まで福島県のJヴィレッジで合宿を行った。昨年は新型コロナウイルスの影響で予定されていたアンダーカテゴリーのFIFA女子ワールドカップはすべて中止に。 今回始動したのは2022年5月にインドネシアで開催されるAFCアジアU-16女子選手権 (翌年のU-17女子ワールドカップの予選を兼ねる大会)に向けて立ち上げられたチームだ。
狩野倫久監督が引き続き指揮を執る。初顔合わせとあって選手たち自身で目標を設定し、“代表として”の自覚を持って臨んだ5日間は大いなる刺激の連続だったようだ。
竹内愛未(三菱重工 浦和レッズレディース)は語る。
「中学の時に行ったタイ遠征(JFAU-14エリートプログラム)では、つけるエンブレムが違ったんです。狩野監督からもミーティングでこのエンブレムをつけるからには、日本代表としてもっとアグレッシブにプレーしようという話があり、自分は積極的に前からプレスをかけることを意識しようと思いました」
尚志高校(女子)とのトレーニングマッチで、竹内はゴールも奪った。 「アジアの選手と対戦したことはありますが、ヨーロッパの選手とはないので楽しみ なんです」と、U-17女子W杯に照準を合わせる。
合宿中に見た国際試合の映像に驚いたという竹内は、 「ユニフォームを引っ張ったり、GKがボールをキャッチしたあとに体を突っ込んでくるのを見て、日本ではあり得ないと思いました。練習の中でも意識していかないと本大会で何もできなくなってしまうので、強度の部分はみんなで意識して取り組んでいます」と話していた。
そんな竹内の実力に一目置いていたのが吉岡心(JFAアカ デミー福島)だ。
「ボールを持った時、裏へのアクションのタイミングだったりとか、駆け引きがすごく上手いです」と目を細めていた。
右サイドバックを担う吉岡の野望は攻撃参加で、「積極的に前へチャレンジして得点に絡んでいきたい。アシストもどんどん狙っています !」。ただ最も彼女が自信を持っているのはコーチングだ。「サイドバックをやり始めた頃、 声を出すことでインターセプトがしやすくなったりすることが多かったんです。自分のプ レーをよくするためにもコーチングで味方を動かしてプレーすることが大切だと思ってます」
サイドの奥から拾い視野で攻守をリードしていく頼もしい存在になりそうだ。
吉岡は「意外と声が通るってこともあり、今はまだ私みたいな大きな声を出す人はいないので、 目立ちます」と笑う。彼女に触発されてどんどん声を掛け合う姿が浸透していけば連係は高まっていくに違いない。
また今回コーチとして、マイナビベガルタ仙台レディースで昨季まで活躍していた元なでしこジャパンの有町紗央里が帯同した。数か月前まで「10番」を背負い第一線で戦っていた有町の存在は絶大だったと狩野監督は言う。
「まず彼女のパーソナリティが非常にポジティブで明るくて常に前向きで、いかなる時もとにかく『やってみます!』って感じなんです。そういった姿勢が選手にも伝わります。自分が実際にプレーで見せて示すことができる。自分から身体を張って、選手がこれくらいやらなきゃダメなんだということを自然と感じられるような取り組みを率先してやってくれています」
この願ってもない有町コーチと選手たちの個性的なカラーの混ざり具合を狩野監督は「絵具効果」と呼んだ。 初回からトレーニングマッチを組むことで、それぞれが自己分析し、ここからチームにとって個々にとって必要なことを共有するという点でも実り多き5日間となった。
今後も7月、9月、11月と強化合宿を予定している。新型コロナウイルスの感染状況を見ながらの活動になるが、この年代のこのメンバーでしかできない独特の「色」を追求する。
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[取材・文・写真:早草紀子]