「今が一番楽しい」中1でGK転向、飯倉大樹が辿り着いた新境地
プロ14年目を迎えた飯倉が新境地を切り拓く(写真は1月1日の天皇杯決勝より)。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
横浜FMの守って、走って、つなぐ”11人目のフィールドプレーヤー”に。
[J1 5節] 清水 – 横浜FM/2018年3月31日/アイスタ
波乱のサッカー人生を突き進んできたGK飯倉大樹がプロ14年目、新境地を開拓している。新スタイルに取り組む今季の横浜F・マリノスは攻撃時、高い位置に最終ラインを設定。そこで生じるDF陣の背後の広大なスペースを背番号21がカバーしている。そしてこぼれてきたボールを拾った瞬間、攻撃の始点となってビルドアップに加わる。
”本家”マンチェスター・シティの正守護神を務めるブラジル代表GKエデルソン・モラエスは、あらゆるキックを使い分けて最後方から攻撃を組み立てる。実際、マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督が志向する、マークがつかずフリーであるGKのキックを最大限に生かした攻撃――それを横浜FMも狙っている。
アンジェ・ポステコグルー監督のもと取り組む、横浜F・マリノスバージョンの全員攻撃・全員守備のスタイル。何より飯倉はその”出会い”を喜ぶ。
「僕自身がまずひとりのサッカー選手。中学からずっとキーパーをやってきましたが、今シーズン新たにアンジェが来て、今、僕のプレースタイルがもっともチームにハマっていると感じています」
飯倉は4節の浦和レッズ戦で走行距離6.779キロを記録している。これはGKの中では18チーム最長だ。もう一人のリベロと言える”11人目のフィールドプレーヤー”の役割を担い、守って、走って、つないで、チームのリーグ戦初勝利に貢献した。
「今が一番楽しいです。とても難しいことを求められることもあります。でも、それに応えていきながらいろいろ発見できて、すごく楽しいです」
まるで恋に落ちたかのような表現だ。横浜の下部組織でずっと育てられ、小学生時代は中盤を務め、中学に進んでからGKに転向した。そして飯倉は今、まさに充実のときを過ごしていると言う。すべての経験が今このときに生きていると実感している。
「海外のクラブのスタイルと似ていると言われればそうですが、やはり身長の大きな選手がいますから。要所では違っていると思います」
目指しているのは決して真似ではない。横浜FMにしかできない戦い方だ。そのなかで、飯倉は飯倉にしかできないプレーを見せている。世界中探してもここにしかない唯一無二の存在として、まだ彼自身であり誰も知らない高みに向けて、胸を弾ませ突き進んでいく。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI