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【U-24日本代表】GK陣全ての好プレーに浦和の鈴木彩艶は拍手を送っていた│現地取材

U-24ガーナ代表戦前のウォームアップでの鈴木彩艶。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

武田英寿の言葉ともつながってくる。

 U-24日本代表の6月シリーズの3試合は、東京オリンピックに向けた貴重な強化の機会となった。

 急きょ組まれた3日の北海道・札幌での日本代表戦から中1日、6月5日の福岡・ベスト電器スタジアムで行われたU-24ガーナ代表戦(〇6-0)は、新型コロナウイルス感染症対策のため無観客で行われた。博多の森での久々の日本代表クラスの試合だったが、ファンの声が届けられない一戦に。そうしたなか、試合前のウォーミングアップを見守っていた。

 18歳でこのチームに初招集された浦和レッズのGK鈴木彩艶は、フル出場することになる谷晃生と組んで練習をしていた。メニューによって、そこに2日前のU-24日本代表戦に出場した大迫敬介、沖悠哉が加わる形を取っていた。

 12日のジャマイカ代表戦(〇4-0)では、谷が先発し、鈴木が後半から途中出場している。第1GKに谷、第2GKに鈴木が食い込みさらに――という状況なのかとも思わせる。ただ、日本サッカー協会(JFA)は新型コロナウイルス対策を徹底している。万が一の「濃厚接触の疑い」を避けるためにも、これまで主力を担ってきた谷と大迫を別々にして、GKを2チームに分けていたとも考えられた。

 谷と鈴木が交互にゴールマウスに入り、キャッチから両サイドのハーフライン付近にいるスタッフへパントキックを蹴り分けていく。そのあと、川口能活GKコーチによる至近距離のシュートストップの練習に移行する。これは気合の入るメニューだ。

 そしてフィールドプレーヤーによるシュート練習が始まると、大迫、沖も加わり、4人がローテーションでゴールを守っていく。

 そこでふと気付いた。

 谷、大迫、沖……ゴールキーパー陣が好セーブを見せると、後ろにいる鈴木は必ず大きな拍手を彼ら3人に送っていた。しかも、心を込めて。純粋にいいプレーを誉めたたえていた。

 もちろんゴールキーパーグローブをしているので、その拍手の音はそこまで(GK陣にも)聞こえない。次第に会場に流れる音楽の音量も大きくなるのだが、試合前、精一杯にチームメイトを鼓舞していた。

 そのあと、再び谷、鈴木と川口コーチによる練習に移行する。そこでも谷が好セーブを見せると、やはり鈴木は熱い拍手を送っていた。

 自分自身のコンディションをチェックしながら、モチベーションを高める。試合直前のウォームアップは、どちらかというとそういう自分自身に矢印を向けた位置づけが重視される。ただ鈴木の気持ちは“いかにこの試合に勝つか”というモードに入っていた。

 最高の状態でこの『GKチーム』でありU-24日本代表が、いかにして目の前の試合に臨むことができるのか。そのために自分に何ができるか。鈴木のそのポジティブな励ましは、U-24日本代表を支える確かな力になっていると感じた。

 きっと、浦和のチームメイトである西川周作、塩田仁史、昨季までともにいた福島春樹、岩舘直らといることで、そういったスタンスも培ってきたに違いない。そして一つ年上である武田英寿が鈴木について、「上手く表現できないが、同い年なのに、プロフェッショナルとしてのあらゆる一つひとつが本当に尊敬できる」と語っていたことがある。その意味するところが、具体的に結ばれたような光景でもあった。

 東京オリンピック日本代表のメンバーは6月22日に発表される。オリンピック枠18人のうち、ゴールキーパーは「2人」と決められている。森保一監督と川口コーチらにより、メンバーはすでに決まっているのか。あるいはこの週末の試合のパフォーマンスも加味されて判断されるのか。

 浦和は20日、湘南ベルマーレと対戦する。J屈指のストライカーであるウェリントン、2列目には浦和にも所属した好調な山田直輝らがゴールを狙う。むしろ彼らの魂を込めたショットを止めることで、鈴木の評価は高まる。しかも対戦相手のゴールを守るのは谷だ。

 規格外のゴールキーパーはその能力のみならず、ハートも熱く頼もしい。東京五輪日本代表入り、さらに金メダル獲得に向けてピッチに立つ日は来るか。

ジャマイカ戦に出場した鈴木彩艶。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

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[取材・文:塚越始]

Posted by 塚越始

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