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「同様のケース表面化していない」Jリーグは全件調査しない方針。浦和のエントリー懲罰問題

鈴木彩艶。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

「すべてチェックしていません」。マッチコミッショナーに“責任なし”、その理由も説明。

 Jリーグは7月1日、J1リーグ浦和レッズが指定公式検査において陰性判定を得ていない選手を公式戦である湘南ベルマーレ戦に出場させた件で、規律委員会の規定にのっとり、浦和の「0-3」の負け試合扱いとする懲罰処分を決めた。スコアは「2-3」から「0-3」に変わる。ただし得点者、出場記録など個人記録は変更しない。浦和は不手際を認める一方、この重い懲罰に対し不服申し立てを検討する意向だ。

 対象試合は2021年6月20日に埼玉スタジアムで行われた18節の浦和対湘南戦。浦和は指定公式検査において陰性判定を得ていない選手1人を試合に出場させた。Jリーグは懲罰内容として、「けん責」「本件試合につき得点を3-0として負け試合扱いとする」と発表した。

 この発表後、Jリーグの担当者がメディアブリーフィングを実施。Jリーグは新型コロナウイルスの検査報告を怠り「エントリー資格」がない選手を出場させたことについて、規律委員会の規定にのっとり、浦和へ厳しい処分を下した。一方、浦和が自ら今回の事象をJリーグに報告したこと、「エントリー資格認定委員会」への申請を欠いたことに悪意がなく手続き上のミスであったこと、当該選手はU-24日本代表活動において必要とされる新型コロナウイルス感染症に関する検査義務をまっとうしていることなどから「酌量すべき事情がある」として、選手への処分は「なし」とした。 

 一方、仕組みが煩雑で、しかも東京オリンピックに向かう日本代表U-24代表活動に参加したことで、選手もクラブもより負担が増えて“うっかりミス”が発生。それをクラブが認識し、Jリーグに報告したことで、そのシステム上の課題を含め発覚した。

 例えば最近も複数の代表活動が行われてきた。クラブによっては、もしかすると、うっかり気付いていないまま、結果報告をJリーグにしていない可能性もある。あるいはJFAの陰性結果を持って問題なし、と判断していたケースも考えられる。

 ただし、Jリーグの担当者はすべてを調査することは難しいと説明した。

「全量すべてチェックはしていません。まずエントリー資格のある方を、ルールにのっとってエントリーするのは、クラブに義務があるのが前提。『エントリー資格認定委員会』と公式検査の2本立てで、資格認定されたリストを提示してもらっています。全量すべてのチェックはしておらず、これまで同様のようなケースが何か根拠を持って表明化しているとは捉えていない状態です」

 今回の事案を受けて、Jリーグも確認作業について「改善の余地はある」としてチェック体制を考えていく。しかし、あくまでも非はクラブにあり、Jリーグサイドへの罰則・処分はないということだ。

「規約・規定の考え方として、ベースにあるのは、正しくエントリーする義務はクラブにあるということ。今回の件で言うと、その義務は浦和レッズにあります。一方、マッチコミッショナーの義務はありません。ただし(コミッショナーには)現場で両クラブが公正な状態で試合できるように努めるという立場で、チェック機能を持たせています。そのチェック機能を怠ったからと言って、何か規律委員会から罰を受けるという建て付けにはなっていないので、今回、規律委員会からマッチコミッショナーへの処分はありません。ただ、公正に競技をするというチェックの一旦を担っている事実はあり、改善の余地はいくつかあり、より公正に競技ができるようにしていきたいと考えています」

 つまり、あくまでも実行委員会、理事会を経て定められた“大原則”であるJリーグの規約にのとって、下された処分内容だということだ。一方、コロナ禍で代表活動を含めて過密日程になるなか、その検査報告の体制について改善も必要だと認識していた。

 今回、浦和のGK鈴木彩艶がU-24日本代表として6月5日と12日の国際親善試合のためチームを離れていた。その期間、Jリーグの公式検査を受けられなかったわけだが、日本サッカー協会(JFA)によるPCR検査の結果を「Jリーグエントリー資格認定委員会」に申請し、エントリー資格の認定を受ける必要があった。JFAのPCR検査で鈴木は陰性判定だったものの「クラブの認識不足が原因」で、そのJリーグへの申請を怠っていたことが判明。その結果、6月23日、柏レイソル戦(〇2-0)での欠場が決まった。

 結果、20日の18節・湘南戦(●2-3)は試合へのエントリー資格がないことをクラブは確認できていないなか、鈴木をエントリー・出場させていたことも分かった。

 浦和はこの決定について、不服申し立てを検討。Jリーグ側は一貫して、リーグサイドに問題はなかったという認識である。同リーグでは史上初の「0-3」負け試合扱いの処分に。場合によっては、サッカー協会の外部にも判断を委ねるのか。そのあたりも注目される。

注目記事:【浦和】エントリー懲罰問題、Jリーグへ「不服申立ても含めた対応を検討」

[文:サカノワ編集グループ]

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