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【浦和】サッカーは友達を作るために。トーマス・デンが難民キャンプを経ての壮絶な人生を語る。東京五輪アルゼンチンを撃破した豪州代表キャプテン

浦和に所属する東京五輪オーストラリア代表DFトーマス・デン。 (Photo by Masashi Hara/Getty Images)

南スーダン出身の両親、紛争を逃れケニアへ。デン6歳の時、母とオーストラリアに渡る。

 東京オリンピック・男子サッカー、J1リーグ浦和レッズに所属するオーストラリア代表DFトーマス・デンがグループリーグ初戦のアルゼンチン戦にセンターバックとしてフル出場し、2-0の勝利に貢献した。

 デンの「あらゆる困難を乗り越えてきた」という人生について、イタリアメディア『ガゼッタ・デロ・スポルト』が7月22日に特集を組んでいる。豪州代表のキャプテンに任命された24歳はそこで、家族との壮絶な歩みとともに、このオリンピックに懸ける思いを語っている。

 紛争地域にあった南スーダン出身の両親は、難民としてケニアに逃れ生活していた。そこで4人の兄とトーマスが生まれた。デンは気付いた時には、兄弟でストリートサッカーを楽しんでいた。

 ただ母国である南スーダンの情勢は一向に改善される兆しを見せない。むしろ悪化するばかり。そこでデンが6歳の時、母親は子供たちを連れて、難民キャンプからオーストラリアに渡る決断を下す。母からは「勉強をするため、チャンスを得るためだよ」と話を受けたのを覚えているという。

 セーブ・ザ・チルドレンの活動に参加していた医師である父親はケニアに残った。しかしオーストラリアに合流する前、2007年にこの世を去っている。

 オーストラリアに渡ったデンは当初、外出する機会も限られたそうだ。そして生用品を買うためスーパーマーケットに行けば、「盗みをするだろうと後をつけられ監視されることがありました。最悪の気持ちになりました」と、偏見に苛まれた。

 そんな気持ちを晴らせるつかの間の時間が、サッカーだ――。

 何よりサッカーをしたのは、友達を作るためだった。

「サッカーのおかげで、アデレードでも、学校でも、練習場でも、友達をすぐ作れるようになっていきました」

 そしてメルボルンに引っ越したあと、ダレン・デイビスに才能を買われてメルボルン・ビクトリーのユースチームに加入。プロの指導者のもと才能を一気に開花させ、トップチームとの契約に至り、オーストラリア代表デビューも果たした。同日には同じ南スーダン難民出身であるFWアワー・メイビルも初出場している。

 その能力、さらには人柄を含め高く評価したのが浦和だった。U-23アジア選手権での活躍を受けて、2020年に獲得。昨季はさっそくJ1リーグ19試合に出場した。そして今年、U-24オーストラリア代表のキャプテンマークをつけて、1年遅れでの開催となった“ホスト国”東京での五輪の舞台に立った。

「私はアフリカのコミュニティを代表していると自覚しています。多くのアフリカ出身の子供たちの一つのロールモデルとなっていて、みんなが敬意を表してくれています。私は彼らに、何か全く別の可能性があると示したい。新たな“スター”はたくさんいます。きっと、この東京オリンピックは良い機会になります」

●プロフィール/PROFILE●
トーマス・デン( Thomas Deng )1997年3月20日生まれ、24歳。ケニア出身、国籍はオーストラリア、南スーダン。キャリアは、メルボルン・ビクトリー ― PSV・U-21 ― メルボル・V ― 浦和。182センチ・73キロ。オーストラリア代表1試合出場。今シーズンはケガから復帰し、J1リーグ3試合、ルヴァンカップ2試合、天皇杯1試合に出場。

浦和でのトーマス・デン。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

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[文:サカノワ編集グループ]

 

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