なぜメキシコの選手は一発退場だったのか?DOGSOの場合、悪質なプレーでなくてもレッドカードに。東京オリンピック、日本GL2連勝
東京五輪、メキシコ戦に臨んだ日本の堂安律。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
堂安の背中へのチャージで、ホアン・バスケスが――。
[東京五輪 GL2節] 日本 2–1 メキシコ/2021年7月25日/埼玉スタジアム2002
東京オリンピックのグループリーグ(GL)第2戦、日本代表が久保建英、堂安律のゴールでメキシコ代表に2-1の勝利を収めた。2連勝の日本はグループ首位。GL最終のフランスとの3戦、引き分け以上で文句なし、また1点差での敗戦でもベスト8進出が決まる。
フル代表ではメキシコ11位、日本28位というFIFAランキングで、昨年11月のオーストリアでの対戦では0-2で敗れている。吉田真也、酒井宏樹のいたロンドン五輪でも準決勝で負けている。
そんな強豪との一戦、勝負の明暗を分けた重要な判定の一つに、日本が2-0とリードして迎えた68分、メキシコの「5番」ホアン・バスケスへのレッドカード=一発退場が挙げられる。
その後、メキシコはフリーキックから1点を返しているだけに、あの退場劇がなければ……。そう悔やまれる場面となった。
そのシーン、田中碧の後方からのキックに堂安がバスケスの前へ体を入れて抜け出す。すると、バスケスが堂安の背中に腕をかける形で、日本の10番を倒してしまう。
そしてポルトガルのアルトゥール・ディアス主審はバスケスに、レッドカードを提示した。
理由は「決定機阻止」、いわゆる「DOGSO(ドグソ)/Denying Obviously Goal Scoring Opportunity 」だ。
「DOGSO」の4条件が成立する場合、問答無用で一発退場になる。
その4の条件は以下の通り。
ファウルされた攻撃側の選手について
1)ボールをコントロールできているか
2)ゴールに向かっているか(プレーの方向)
3)ゴールとの距離
4)守備側の選手の位置と人数(GKまで妨げる選手がいないか)
今回、堂安がファウルを受けていなければ、GKギジェルモ・オチョアと1対1になっていた。
そのため、2、3、4は成立する。主審が考えたのは、1だった。
ただ堂安はボールをトラップしていないものの、バスケスの前へ体を入れて、マイボールにしている――と判断したのだ。
また、これがペナルティエリア内で、ホアン・バスケスがボールにチャレンジしていた場合、三重罰(退場・PK・次戦の出場停止)からの減罰で、大きなチャンス阻止にあたる「SPA(スパ)=Stopping a Promising Attack」となり、イエローカードに収まっていた可能性もあった。
加えて、今回はVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)も採用されている。レッドカードの判定に関しては、VARが介入できる事象の一つ。もしも、主審が重大な間違いをしていれば、VARは確認を促していた。
逆に、VARも同時にチェックしており、この判定について、妥当だと判断していたことになる。
このドグソは、ファウルの悪質さとは関係なく、レッドカードの対象になる。
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[文:サカノワ編集グループ]