×

【指導者の視点】W杯出場へ転機の「3MF」採用、直接ボールに触れなくても大きな力に。2つの大きな効果

オーストラリア戦、三笘薫の2ゴールで日本代表がW杯の切符を掴み取る!(Photo by Mark Metcalfe/Getty Images)

遠藤航・守田英正・田中碧のトリオが作り出した時間とスペース。

[W杯アジア最終予選 第10戦] 日本代表 – ベトナム代表/2022年3月29日19:35/埼玉スタジアム

 カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選、サッカー日本代表(SAMURAI BLUE)にとってターニングポイントとなったのが1勝2敗で迎えたオーストラリアとの第4戦だった。森保一監督は中盤を逆三角形とする4-3-3システムを採用、中盤3枚を遠藤航、田中碧、守田英正にして、これがファーストチョイスとなった。

 この中盤トリオがもたらした主な2つの効果を検証したい。

▼ポイント1
技術を生かしたテンポのいいボールキープ。その時間を活用しての前線に関わる(ペナルティエリア、ゴールが奪える位置に侵入していく)回数の増加

 一つ目は分かりやすいが、この3人が組み、人とボールがアクティブに動きながらチームとして相手陣内に前進していけるようになったことだ。技術の高さ、ボールの状況を読み間違えない判断力の高さはもちろん、運動量も兼ね備えた3人が組み、チームの中央に安定をもたらした。

 加えてチームとしてボールキープできる時間が増え、前線に人数を配置できる、前線まで上がっていける機会も作れた。1勝2敗と躓いた最初の3試合に比べてもペナルティエリア付近に入っていく人数、セカンドボールを拾って2次攻撃に繋げていく回数、そしてチャンスは明らかに増加した。

▼ポイント2
巧妙だった守備のポジショニング、6試合1失点に抑える

 3人は単にボールを奪う、球際が強いといった部分だけでなく、相手の狙いたいパスコースを消す、ボールが奪いに行ける状況かそうでないかの判断がとても早かった。そのインテリジェンス(賢さ)の高い守備が、チームに安定したパフォーマンスをもたらした。

 常に相手の後ろにマークしなくても、相手が出したいパスコースの線上に立ち、それだけで相手の選択肢を複数消せていた。

 またポジショニングを取り直す能力が高く、直接ボールに触れなくても、ディフェンスラインの大きな助けとなっている。その結果、6試合で1失点と、チームとしてもこの上ない成果を上げた。

 この6連勝では伊東純也のスーパーゴール、谷口彰悟と板倉滉の活躍、そして三笘薫の圧巻の豪州戦2ゴールなど、様々なポジティブな要因があった。なかでもこの「3MF」のもたらした効果は大きかった。

 W杯本大会で世界の強豪国相手に、どこまで通用するのか。どのくらい上回っていけるのか、何よりこの3人で行くのか? 森保監督が大幅なメンバー入れ替えを明言したベトナムとの予選最終戦、そしてあと7か月の戦い、このポジションを巡る争いとその効果にも注目していきたい。

【著者プロフィール】
佐川祐樹(さがわゆうき)
1992年4月25日生まれ。広島県出身。広島大学大学院時に指導者キャリアをスタート。広島皆実高校サッカー部コーチ、広島修道大学サッカー部監督を経て、2018〜2020シーズンの3年間、FC今治のU-14コーチを担当。元日本代表監督でFC今治オーナーの岡田武史さんから「OKADA Method」を学び、原理原則やプレーモデルを大切にする育成法を学ぶ。現在は、山口市役所で勤務しながら山口県のサッカーに携わっている。

【注目記事】
【日本代表】ロシアの雪辱へ原口元気「ポジションを奪うためギラギラしていく」

【日本代表】三笘薫、中山雄太ら躍進。長友佑都が唸った若手の吸収力「一つのいいプレー、一つのいい試合で一気に化ける」。自身4度目のW杯出場&ベスト8入りを誓う

日本人選手市場価格トップ20。4位久保建英、3位南野拓実、2位・1位は…

Ads

Ads