【日本代表】不調説否定。香川真司を復活させたシュテーガー監督の「魔法の言葉」
日本代表の香川真司 写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
「キャリアで一番のパフォーマンス」と言った理由。監督交代後に取り戻したトップフォーム。
ドルトムントに所属する日本代表MF香川真司が帰国し、30日のガーナ代表とのキリンチャレンジカップに向けた5月21日からのキャンプに合流した。3か月もの間、ケガなどのため実戦から遠ざかっていたためコンディションが不安視されるが、香川は「皆さんが思っているほどケガの問題はない。そこは強調したい」と不調説を否定した。
香川を不安視したのが、18日に日本代表のメンバー発表の記者会見を行なった西野朗監督だった。
「香川については、これは本当にデリケートに考えないといけないと思います。選手生命にかかわると言いますか、3か月もトップステージでやれていない。という判断で招集し、彼の状態を期待しながら、このキャンプで最終的に確認したい。数週間前に彼の状態を確認してきた。そのうえで、最終的に入ってきてもらいたいメンバーであるのか、ないのか、現時点でキャンプで見て判断したいと。彼も替えの利かないプレースタイルを持っている。彼のトップフォームに戻ることを期待しています」
西野監督はそのように、香川が23人枠の当落線上にあることを強調した。
2017-18シーズンは19試合出場、5ゴール3アシスト。数字としては確かに平凡かもしれない。
ただ、ペーター・ボシュ監督からペーター・シュテーガー監督に交代した16節以降、香川は攻撃的MFのレギュラーの座を掴み、新体制初陣のマインツ戦でゴールを奪うなど5試合で3得点2アシストと活躍。紛れもなくトップフォームを取り戻していた。いや、新たなプレースタイルを見出して、チームを浮上させた。
シュテーガー監督が就任時に強調して言っていたのが、「それぞれの選手が、自分の力を最大限に発揮できるシステム、ポジションを優先して考える」だった。選手の特長を最大限に生かす――それは香川を復活させる魔法の言葉となった。
4-2-3-1のトップ下に起用された香川は、チーム内には彼しかないクイックネスな動きで変化を加えて攻撃を活性化。さらにハードワークでの貢献も光った。周りの特長を引き出すことで、自らも生きる。そのようにしてチームも調子を上げていった(香川が離脱したあと、一時、2位まで浮上。最後は4位でフィニッシュ)。最終節のホッフェンハイム戦後、香川は17-18シーズンについて「苦しみ壁はあったが、無駄がなく、むしろ、キャリアで一番良いパフォーマンスだった」と語っている。それは決して強がりではない。確かな手応えだった。
既定路線だったとはいえシュテーガーの退任が決まり、来季からはニースを率いてきたスイス人のリュシアン・ファーヴル新監督の就任が決まった。
シュテーガーのもとで放った強烈な輝き。FIFAワールドカップ・ロシア大会に向けて、その成功体験を得たコンディションに近づくことができるか、もしくはその先へと突き抜けられるか。
日本代表の10番を背負う香川。何も悲観ばかりする必要はない。むしろ、日本の現状を打破できる希望の存在の一人だ。
文:サカノワ編集グループ