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【現役GK視点のW杯】「永嗣へ――」塩田仁史(大宮)②/川島の同世代から一言

ロシアW杯、2試合連続出場中の川島(1番)。ポーランド戦では西野体制下初のシャットアウトなるか!(22番は吉田、15番は大迫) 写真:新井賢一/(C)Kenichi ARAI

一学年違いの”同業者”。「GKに重要なのはリバウンドメンタリティ。アイツは『持っている』」。

[ロシアW杯 グループH] 日本 – ポーランド/2018年6月28日 日本時間23:00/ボルゴグラード

Jリーグの現役ゴールキーパーはどのような視点でワールドカップを見ているのかを聞く短期連載全3回の2回目。大宮アルディージャGK塩田仁史選手が、「以前には食事に行ったこともあり、昨季最終節の川崎対大宮戦後でも少し話をしました」という日本代表の川島永嗣選手について、少し触れてもらった。「僕なんかが言う立場にないのは承知しています」とは言うものの、最近のバッシングに”同業者”として心を痛めているという。

——ワールドカップ・ロシア大会、ロシアこれまでGKのミスが目立つような形になっていますが?

 もちろんミスはミスで、(川島)永嗣はいろいろ言われていますが、スペインのデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)も、アルゼンチンのカバジェロ(チェルシー)もミスから失点しています。では、一体、誰だったら完璧なのか? そこは紙一重です。

 アルゼンチン対クロアチア戦(0-3)、53分にカバジェロがキックミスして、レビッチにボレーで蹴り込まれました。すると約30分後の80分、モドリッチにミドルを決められてしまう。ゴールの隅を突いた良いシュートでしたが、カバジェロの技量を持ってすれば普段であれば止めていたでしょう。さらに完全に崩されて3点目も与えてしまう。GKは試合中に心を揺すられることがすごく多いポジション。ミスを引きずってしまうと、カバジェロほどのレベルのGKでも持ち直すのが簡単ではないのだと思いました。

 現代GKは数多くの役割が求められ、ゴールに直結する一瞬の判断を常に求められます。それでゴールを守りながら、スペースも埋める。大会のグレードが上がるほど、より高いプレーレベルも求められます。

ロシアW杯に見える傾向やトレンドについて語ってくれた塩田仁史。 協力:大宮アルディージャ

——W杯もここからさらに高いレベルのGKが、チームを勝たせていくと。

 永嗣だってそういう存在になり得ます。そこは気持ちの持ち方も関わってきます。みんな図太い一面がある一方、先ほど言ったように試合中に心が揺すられるポジションでもあり。そのあたりは周りも少し感じてあげてほしいですね。

——負けていないのに戦犯扱いのようで……。

 まあ……僕が言う立場にはないのは承知しています。ただ一学年違いの同世代として一緒にやってきた立場で、少しだけ言わせていただきますと……。

 GKにとって、何が大事かといえばリバウドメンタリティ。セネガル戦で永嗣のパンチングが押し込まれました。でもGKは起こったあとに何をするかが肝心です。その失点のあと、アイツは決定機を含めシュートを止めています。永嗣自身が「試合を難しくしてしまった」と言っていましたが、一方で、そのあとの彼のプレーがあったからこそ、チームは同点に追いつくこともできた、と言えます。

 それに、あの失点が前半の早い段階で良かった。それもアイツが「持っている」と言えるところ。ワールドカップ3大会連続でずっと牽引してきたわけだし、同業者の立場としては、自信を持ってやり切ってほしいと思います。

 何よりあの失点後は、かなり吹っ切れてプレーできている気がします。

—-GKの失点につながるミスはやはり目立ってしまいますが、背景に目を向けると、要因は多々あって、失点もただ一人の原因ではないことが見えてきます。

 批判は仕方ないけど、過剰すぎる気はします。今回の報道は、僕ら同業者もヘコむぐらいですし、守ってあげたくなりますよ。永嗣はしっかりリカバリしていたと思います。日本は守備でも感動させられるぐらいの集中やインテンシティを見せてきました。やっぱり、最後勝つにはそこが重要なんだと伝えてくれていますし、僕も頑張らなければと痛感させられます。だから、まだまだここから。吹っ切れた永嗣に僕は期待したいです。

PROFILE 塩田仁史 しおた・ひとし/1981年5月28日生まれ、茨城県日立市出身。日高SS-滑川中—水戸短大付属高ー流通経済大ーFC東京ー大宮アルディージャ。今季2試合0得点、J1通算91試合0得点、J2通算25試合0得点。現役15年目を迎え、J1復帰を目指すチームを支える頭脳派かつ闘魂のゴールキーパー。

※短期集中連載。次回最終3回目は6月30日(土)頃、「ルール改正とマリーシア」をテーマに掲載予定です。

取材・文:塚越 始
text by Hajime TSUKAKOSHI

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