【浦和】強化費はアル・ヒラル数倍、欧州メガクラブ30倍…ACL制覇、土田SD・西野TD「巨人たちといかに戦うか」と『世界との差』など語る
オンラインによる取材に応じた浦和の土田SD、西野TD。(C)SAKANOWA
スコルジャ監督のスタンスとこれまでのチーム作りを高く評価。
J1リーグ 浦和レッズの土田尚史スポーツダイレクター(SD、強化体制全体の責任者)、西野努テクニカルダイレクター(TD、トップチーム強化責任者)が5月9日、オンラインによる取材に応じて、AFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)2022を制覇しての感想、マチェイ・スコルジャ監督への思いなどとともに、2023年・2025年のクラブワールドカップ(W杯)出場を果たしたことでのビジョンなどを語った。
就任からこのファイナルを見据えてきたというスコルジャ監督は“一戦必勝”(ホーム&アウェーだが)でしっかり準備し、選手たちもそれに応えて、アル・ヒラルに苦しみがらも2試合トータル2-1でタイトルを獲得した。スコルジャ監督のこれまでの評価を問われると、土田SDは次のように語った。
「我々がこの立場になった時に示した最初のコンセプトをベースにチーム作りをしてきています。チームがこうした変化をしてほしいとは思っていました。何より、ハートの良さ、人の好さ、人間性の良さが、彼に好感を持った一番の理由でした。一つにして、闘うチームを作る。同じ絵を描いて、同じ方向に進める。そういったマネジメント能力の高さは感じています。一緒に仕事をしていると、数多く驚かされることがあります」
また西野TDは「主観に頼らず客観的にしっかり科学的にも分析していくと記者会見でおっしゃっていたが、その点に関してはすごく進歩してきていると思います。それを理解して使えるコーチングスタッフを含め、表には出ていないものですが、着実な成長をしていると思います」と語った。
ただシーズン開幕から約2か月半ということで、「まだまだやるべきことはたくさんあるのが前提」(西野TD)として、指揮官について評価をするのは、シーズン終了の段階であるべきだというスタンスも示した。
一方、このアジアタイトル獲得により、2023年12月のサウジアラビア大会、さらに新フォーマットになる2025年大会と、FIFA(国際サッカー連盟)主催のクラブワールドカップの出場権を獲得した。
世界への挑戦――。そのステージで戦っていくために、西野TDは、クラブそして日本のサッカー界全体の活性化が必要だとも語った。
「今回対戦したアル・ヒラルのチーム人件費は、(浦和と比べて)2、3倍以上、数倍違っています。このホーム&アウェー方式で勝てたことは大きな経験にはなりました。ただサウジアラビアや中東の国はどんどんサッカーに投資していて、個の力が上がっていくことが見えています。さらに欧州のビッグクラブとは20、30倍の人件費の差があり、そう考えるとクラブの財政規模を上げなければいけません。
よりたくさんの人に応援してもらい、リーグ日本一であるスポンサー収益もより必要で、クラブ全体の成長も必要かもしれません。その費用を効果的に活用し、ピッチ上で巨人相手に勝たなければいけません。どのように差を詰めるのか。クラブのみならず、サッカー界全体で考えていくことも必要ではないかと思っています」
ちなみに浦和が発表している2022シーズンの選手・監督・スタッフの人件費は28億5300万円だった。
ただ、32チームで争われる新クラブW杯に出場することで大規模な強化費も獲得できることになる。その点について土田SDは次のように語った。
「これから中長期の視野でチームを作っていく時、こうした大会(新クラブW杯)が先にあり、様々な努力をしていかなければいけないと思っています。とはいえ、そこに目を向けるのではなく、まず目の前の1試合1試合を大切に、一つひとつ表現したいサッカーをすることが大切です。そこから(クラブW杯)の逆算と上手くバランスを取りながら、やっていかなければいけないと思っています」
アジア制覇により、新たな“世界”が開けたのは間違いない。