【秋春制】夏も冬も配慮し「実質4-5か月休みの選手」増加。一方ACL勢は超ハード日程。新潟の中尾社長も明示した残された幾つもの課題
写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
重要である「経営へのインパクトの試算」もまだ…。
アルビレックス新潟は10月22日、中野幸夫社長が21日に「Jリーグの秋春制移行決定報道」を受けてメディア対応した発言を公式サイトで公開した。これまで現地メディアなどを通じて「降雪」の問題がクローズアップされてきた。ただ、Jリーグがその点についてスケジュール面で配慮したうえで、それでも中野社長はいくつか解消できずにいる大きな課題を挙げている。
まず中野社長は、18日の実行委員会で「シーズン移行へ前向きに残りの課題を検討していきましょう」という話があり、『移行ありき』になっていないかと改めて訝ったという。加えて、本来最重要である「経営へのインパクトの試算」について、これまで数字が出てきていないなか、それでは決断できないのではないかという話もしている。
そして降雪地の問題について、「12月から3月上旬まで試合を組まない」という条件が提示され、そもそもそれが可能なのかとも指摘している。夏場の試合も減らすという話も盛り込まれ、つまり日程面で、あらゆる方面へ“上手く調整する”と説明。夏も冬も一定の休みを挟めば平日開催の試合が増え、それが結果的に誰のメリットになるのかも見えてこない。
そもそも現在、J2リーグはプレーオフ制を採用している。そのプレーオフに残れなかった場合、約4か月、公式戦がない。ある選手の仲介人は「実質4か月、試合がない。それだけ仕事がないというのは、社会の感覚とズレてきている。(秋春制は)J2が20チーム制になり、示されたスケジュールでは、J3を含め試合がない期間がさらに延びる」と語っていたことがある。実は一定の選手の「超ハード日程」が話題になる一方、J2以下のクラブチームの選手は「休みが多い」という認識を持たれつつある。
年間を通じて試合を行いチャンピオンを決める。それがリーグ戦の醍醐味である。ただ、暑い日も、寒い日も選手に配慮する。結果、前期・後期集中型のような働き方になる。果たして、それは大多数が望む形なのだろうか。
シーズン移行した場合、開幕は盛夏にある8月上旬に設定されている。降雪地域に配慮し、冬季(12月中・下旬-2月)も約2か月ブレイクを挟む。そして6月・7月がオフ&プレシーズンに。平日カードが増え、また天皇杯決勝は元日に組まれている。
ルヴァンカップもトーナメント制になるため、「勝ち続けた選手ほど休めない」問題も保留されたままだ。J1リーグを20チーム制にすることで、エリートクラブほど超過密日程が待っている。結果、ACL組にあらゆる皺寄せが来る、という構図がますます進みそうである。
一方、ACLに出場してきたクラブの現場サイドとしては“シーズンまたぎ”ではなく、一つのチームでシーズンを戦い切りたいという本音もある。が、AFC西地区(中東)の意向に沿って日程を合わせることで、日本勢のACLでの勝算が高まるとは言えない(2022シーズン、浦和が制したように)。結果、このシーズン移行問題について、上位陣はどのクラブも静観しているのは気になるところだ。
中野社長は現在の2-12月に組むスケジュールのなかでやりくりするのが、結果的に最適ではないかと訴えている。地元メディアに配慮した「雪国クラブ」の立場も示しているが、その先にある問題について問い掛けている内容だ。
また一方、この公開された発言を見ると、規模も立場も様々な60クラブが集まることで、議論がそこまで深まっていない現状も見えてくる。
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AFCやJFAの意向はあるものの、現在示されている欧州主要&中東のリーグと新スケジュールを合わせるメリットは、日本人選手のヨーロッパ移籍、ACLをシーズン通して1チームで戦えるという2点以外に感じられない。世界の潮流のなか、欧州主要リーグやサウジアラビアなど中東と移籍期間を合わせて、Jリーグのクラブに補強面で勝算やメリットがあるとは思えない(いつかまた日本のブームや波が来るかもしれないが、明らかに時宜を逸している)。あるいは日本人選手の欧州流出をより促進するという前提に立つのであれば、Jリーグがそのための戦略を立てるべきで、そうした議論も求められているのかもしれない。