【日本代表】長友佑都、酒井宏樹の座を、室屋成が揺るがすための条件
日本代表の室屋成。昨年12月のE-1東アジア選手権でA代表デビューを果たした。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
不足するサイドの人材に加わってきたい。ただ本人は「守備あっての攻撃」と言っていたが…。
[キリンチャレンジカップ] 日本 – コスタリカ/2018年9月11日/パナソニックスタジアム吹田
FC東京のDF室屋成がコスタリカ戦、右サイドバックまたは右ウイングバックでの先発出場が有力視されている。国際Aマッチデビューを果たした昨年12月のE-1東アジア選手権以来の日本代表復帰。果たしてどのようなプレーを見せてくれるのか楽しみだ。
ただ一つ、気になっていたことがある。
森保ジャパンの活動に合流する直前、スコアレスドローに終わった25節・サガン鳥栖戦後のことだ。日本代表でどのようなプレーを見せたいかと問われた室屋は、次のように答えていた。
「いつもと変わらず、東京でやっているプレーをそのまま代表でも出していきたいと思っています。このチームでやっていることをどれだけ出せるか」
――最近は仕掛けのところで手応えを得ているようだが?
「まずは守備から。守備あっての攻撃での違いを出していければと思います」
室屋はそのように「まずは守備」と強調していた。
Jリーグでは、思い切った爆発的な仕掛けから、ときにシュートまで持ち込んできた。彼のバイタリティ溢れるプレーが、FC東京の上位躍進を支えてきた紛れもない一つの要因だった。
一方、先のコメントには、その豪快なオーバーラップに焦点が当たりすぎているがために、DFなのだからまずは守備から、という想いが込められていたのだろう。守備あっての攻撃という意識の持ち方も、もちろん当然と言えば当然だ。
それでもFC東京で彼が開幕直後にスタメン落ちしたとき、FC東京の長谷川健太監督に理由を尋ねると、「もっと攻撃的にプレーしてほしい」と要求されたと言っていた。
そこで、室屋は割り切ったのだ。
「ならば、めちゃくちゃ攻めてやろうと思った」
スタメンに復帰した2試合目、今季初ゴールを決めた7節の鹿島アントラーズ戦(〇2-1)。室屋は敵陣でフィニッシュかクロスを仕掛けるまで、あるいはゴールラインまで走り切るプレーを見せ続けた。”やりきる”プレーを貫いた。そこで室屋も、チームもしっかりキッカケを掴み、上昇気流に乗っていった。
ところが一方、最近のFC東京は、リーグ5試合勝ち星がない(2分3敗)。ケガによる主力選手の不在が影響したとはいえ、もしかすると、その鳥栖戦後のコメントにもあるように、守備と攻撃のバランスを考えた室屋のプレーもチームの停滞に関係していたと言えるかもしれない。自身はそう思っていなくても、どこか”慎重”になり、一時期のようなある意味ゲームを壊すような”勢い”がなくなっているのではないか。
室屋がなぜ森保監督に招集されたのか? 3バックも4バックも柔軟にこなせるのは大きな一つの理由に挙げられる。室屋自身も「去年も3バックでウイングバックをしていますので、どちらもできるのが自分の特長であり、強みだと感じています」と語る。
ただ、最も評価されているのは、やはり竹を割ったような豪快なプレーにあるはず。リスク管理を考えるあまり、中途半端なプレーに終始するのだけは避けたい。
今後の指標にもなる森保ジャパンの初陣コスタリカ戦。酒井高徳の代表引退もあり、サイドの人材は不足気味だ。長友佑都と酒井宏樹の座を脅かすぐらいの、室屋の豪胆なプレーを、ぜひ生まれ故郷でもある大阪の地で見せてもらいたい。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI