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鈴木優磨へのレッドカード、上田主審はまず極めて危険なタックルをした椎橋慧也にしっかり忠告すべきだった。そこに鈴木への「先入観」はなかったか?

鈴木優磨。。写真:松村唯愛/(C)Yua MATSUMURA

2人がかりでファウル覚悟、最後は後方から削る悪質な行為。しかし主審の意識は椎橋ではなく、すぐに鈴木へ向いている。

[J1 36節]鹿島 0–0 名古屋/2024年11月9日/カシマスタジアム

 J1リーグ36節、鹿島アントラーズ対名古屋グランパスの一戦はスコアレスドローに終わった。この試合の58分、鹿島のエース鈴木優磨が後方からのファウル覚悟の危険なスライディングタックルを受けると、怒って椎橋慧也を胸で押して倒して一発レッドカードによる退場処分を命じられた。

 この退場劇を巡り、鹿島のベンチにいたスタッフも異議を唱えた。すると上田益也主審は中後雅喜監督に対してもイエローカードを提示した。

 問題のシーンを振り返りたい。左サイドのタッチライン沿いで、仲間隼斗の粘ったポストプレーからリターンパスを受けた鈴木優磨が縦にボールを持ち運ぶ。

 すると、まず稲垣祥が後方から止めに来たが、鈴木はこれをブロック。稲垣が転倒して、さらに力強く突き進む。すると、続いて止めに来た椎橋の対応が遅れ、斜め後方から足に向かうスライディングタックルで鈴木を転倒させた。二人がかりでのファウル覚悟のプレーだった。

 そして鈴木は起き上がろうとした椎橋に胸で突き倒す、そこに上田主審が来て、すぐ鈴木に制止する。そのあとも注意は鈴木のほうへ向いたまま。さらに選手たちの小競り合いが続くと、VARと交信していると伝える。落ち着くと鈴木へ「乱暴な行為」によりレッドカードを提示した。

 こうした球際の攻防でエキサイトするシーンは多く見られる。今回気になるのは上田主審の対応だった。

 まず現象の発端は、稲垣でも止めらず、それに続き、椎橋は極めて危険である選手を削るための後方からのタックルを、鈴木に向かってしていることだ。

 フィジカルの強い鈴木だからこそ起き上がれて、怒りを爆発させたとも言える。

 審判がまず咎められるべきは、劣悪なファウルをした椎橋であったはずだ。

 しかし主審は椎橋本人が見えるかどうかの感じでイエローカードを提示し、すぐ鈴木へ意識を向けている。

 そこに”鈴木優磨だから”という先入観はなかっただろうか?

 まずは推橋に向かって、その危険なタックルは許されるべきではないことを強調すべきだった。後方からの足を削るスライディングタックルは、決して”テクニカルファウル”などと呼んではいけない悪質なものだ。鈴木だから立ち上がれたし、鈴木だから報復をした――。そのような主審、さらにはVARの“鈴木優磨基準”の判断基準があったように見えてしまう。

 鈴木の行為が許されるわけではない。とはいえ名古屋の繰り返しのファウルに、まず主審は毅然とした対応すべきだったはずだ。

 加えて鈴木に対してレッドカードを提示した際、その押し倒した行為、それとも何かしらの発言などが対象だったのか。本人への説明もせずに主審は振り返っている。

 激怒した鈴木が悪いという声も、もちろん正しいし妥当だ。とはいえ、こうした極めて危険なアフターチャージによるエース級の選手たちを削る行為が、ある意味“容認”されるリーグとなってきている印象すらある。挑発したほうが、なぜか優位になっている。

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 果たして、それが健全であり、本当の意味でのフェアプレーなのか。観客のみならず、現在続く選手の海外流出(外国籍選手の日本離れ)が続く一因になっているのではないか。結果的に見せ場も少ないスコアレスドローに終わった。