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【日本代表プレー解析】南野拓実が貫いたスタンス、興味深いシュート5本の内訳

コスタリカ戦で日本代表初ゴールを決めた南野拓実。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

故郷に錦を飾った23歳、あくまで徹したのは――。

[キリンチャレンジカップ] 日本 3-0 コスタリカ/2018年9月11日/パナソニックスタジアム吹田

 日本代表のFW南野拓実が森保一監督体制下の初陣となったコスタリカ代表戦、ファーストゴールを決めた。自身にとっても国際Aマッチ3試合目にして初ゴール。オーストリアに渡って3年半、23歳の新エース候補はこれまでとは異なるパフォーマンスを見せ、まさに異彩を放った。

 今回は攻撃時は小林悠のやや後方となるトップ下気味、そして守備時は2トップになる形。森保監督から前線の選手たち(特に2トップ)には、相手の最終ラインがボールを持った際、自由にパスを出させないよう「必ずプレスに行く」ことが徹底されたという。

 南野は小林とほど良い距離を保ちながら、プレッシングのみならず、自身の受け持つエリアに入ってきた選手へのチェックも怠らなかった。

 スペースもあって比較的自由にプレーできるサイド以上に、トップ下として、そういった守備のタスクも求められた。その仕事をしっかりこなしながら、チーム最多の5本のシュートを放っていった。そして66分、”フレッシュジャパン”を印象付けるような、中島翔哉→遠藤航→南野とつないで鮮やかなゴールを奪ってみせた。

 南野のシュート5本の内訳が興味深い。

 右足2本、左足2本、ヘディング1本。ペナルティエリア内2本、外が3本。

 「形」にこだわらず、柔軟にシュートを放っていたことが分かる。枠内シュートが得点シーンの1本のみだったのは課題に挙げられるが、以前のように得意とするカットインに持ち込もうとするのではなく、流れに応じて、周囲とフレキシブに対応し、そのなかで得点を奪ったところには進化が感じられた。

「前線の選手には、まず特長を出し合うことが求められた」(小林悠)なかで、森保監督も南野の持つ”たくさんの引き出し”をぐいぐい押し出すことに成功した。

 何より南野は、ゴールよりまず勝利を優先していたと言う。彼は試合後、次のように話した。

「チームが勝つことに徹してプレーしていました。だから試合が終わった今、振り返ってみて、(ゴールも決められて)『良かったな』と思っています。チームとして、結果を残せたことが何よりです。(遠藤からのパスについて)あそこまでボランチの選手が攻撃参加して、本当にいいパスを出してくれて、感謝しています。ホンマ、いいボールが来て、ワンタッチで打つか、トラップするかを考えましたが、『難しいな』と判断してトラップするのではなく、シュートに行きました」

 終わってみれば、前線の選手のなかで唯一、フル出場を果たした。足が止まっていなかった、という証だ。

 巧さに加えて、力強さ、粘り強さ、それに試合を読む力と、90分間のなかで様々な高いスキルと能力を示した。10代にして海を渡り、ザルツブルクの主力としてリーグ4連覇に貢献。ヨーロッパリーグにも参戦してきた経験は、やはり相当なものだ。

 今回、セレッソ大阪の「13番」のレプリカユニフォームを着ているファンの姿も見られたなか、南野が故郷の大阪で錦を飾った。そして期待に応える代表初ゴールによって、自身とチームの未来を切り拓いてみせた。

取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI

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