【日本代表】沈黙の数秒間…青山敏弘だけが快勝に浮かれていなかった理由とは?
森保新監督の初陣で、キャプテンマークをつけた青山敏弘。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOUHARA
新たな「17番・主将」。完璧な船出に見えたが…。
[キリンチャレンジカップ] 日本 3-0 コスタリカ/2018年9月11日/パナソニックスタジアム吹田
森保一監督の初陣となったコスタリカ戦、キャプテンマークを託されたのはMF青山敏弘だった。
森保監督がサンフレッチェ広島で指揮した時代、2012年、13年、15年と一緒に三度のリーグ優勝を成し遂げた。ポジションは森保監督の現役時代と同じボランチだ。
すなわち、指揮官の分身と言える存在だ。
「前線は良い攻撃ができていた。あんまり考えすぎず、後ろ(青山をはじめボランチより後方)はシンプルにプレーしていました」
前線4人が自由に仕掛けていき、特に後半、数多くのチャンスを作り出していった。終わってみれば、3-0の勝利。完璧な船出に見えた。
収穫はたくさんあったのではないか――。しかし、そう問われた青山は「うーん」と唸り、数秒間考え込んだ。
「自分自身としては、あまり納得のいく内容ではなかった。もちろん期待感は感じていて、本番でどのくらいできるか僕ら自身も楽しみにしていて、思い切りの良さを出せたと思います。でも、森保さんの色っていうのはそこまで出てない」
コスタリカはFIFAランキング32位と、日本の55位よりも上位の実力国だった。とはいえ、今回来日したメンバーは日本と同じくちょうど転換期を迎えていたメンツであり、そして時差などコンディションも決して良いとは言えなかった。つまり、ワールドカップのような超本気モードではない。
相手もまたDF陣をはじめ、これからA代表の戦力として計算が立つのかどうか見極めている段階。だからある意味、青山の視点からは、アタッカー陣がハマれば、これぐらいはやれて当然だったと感じていたようだった。
3ゴールはいずれも鮮やかだった。新生・日本代表を印象付ける快勝劇を飾ってみせた。
ただ一方で、青山はこの結果に浮かれることなく、冷静にこの日の90分間の内容を吟味していた。32歳になる新たな「17番・主将」。むしろ、こうした喧騒の中でこそ、その存在が際立っていた。
森保監督が絶大の信頼を寄せる理由が分かる気がした。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI