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なるほど…ドン・ファン元妻の無罪判決、二つの決め手とは!? 若狭弁護士が詳しく解説「覚せい剤の摂取方法について…」

裁判所 (C)Getty images

A子の証言も重視され、疑わしきは罰せず。

「紀州のドン・ファン」こと野崎幸助さん(享年:77歳)が2018年5月に急性覚醒剤中毒で急死したのを巡り、殺人と覚醒剤取締法違反の罪に問われた須藤早貴被告(28歳)に対し、和歌山地方裁判所は12月12日の一審で無罪判決を言い渡した。

 この件について、元検事で弁護士の若狭勝さんが12月20日、自身のユーチューブチャンネルで「【ドンファン事件無罪】今後無罪が続出、究極の選択か!」と題した動画をアップ。「今までの裁判官だけの裁判、市民感覚が十分反映されていない裁判員裁判であれば、9割の確率で有罪になっていたのではないかと思っていました」というなか、一体なぜ無罪となったのか、二つの大きな理由について解説している。

 今回は市民から裁判員が選ばれる「裁判員裁判」によって進められた。そのなかで須藤被告が野崎さんに対し、どのように覚せい剤を窃取したのか。その方法が検察側から具体的に示されなかったことが、まず無罪になった大きな要因になったというのだ。

 さらに野崎さんと20年ほど交際していたというA子さんが証言に立ち、野崎さんが覚せい剤の使用を仄めかしたと発言。冗談のような口調だったが、むしろそういうことは冗談っぽく言うものでもあるとして、重要発言として扱われた。

 何より検察側の主張では、野崎さんは一切覚せい剤を使用していないということだった。しかし、決して「使用していない」とは言い切れない……という状況になった。そうして「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の大原則が貫かれての判決が言い渡されたということだ。つまり、事故死などの可能性も十分残されたため、犯罪を断定できないという結論である。

 今回の裁判員裁判を経ての判決を踏まえ、若狭さんは今後の刑事裁判について、これまでと流れから変わっていくだろうと展望する。何より「疑わしきは罰せず」の考えが強めに働き、「無罪判決が続出する可能性もあり得る」と見ていた。

 若狭さんは、その理由に3点を挙げる。

 まず最近の袴田巌死刑囚が無罪となった冤罪事件を受け、裁判員は自分が関与した裁判で将来冤罪となることを避ける意識が芽生えている。 

 もう一つは、専門の裁判官も検事・検察の言うことを鵜呑みにすることが危険ではないかと、少なからず疑って情報に接するケースが増えていると見る。

 さらに、最近の検事・検察の取り調べには問題があり、検察の事実・証拠認定の能力低下もあるのではないかと持論を述べた。

 つまり、有罪とするためには「事実」を明確にするため、より完璧な立証が求められるということだ。

 このあと予想される控訴審では、今度はプロの裁判官3人が判断する。ただし一審の裁判員裁判が下した事実認定は尊重されななければならない。

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 今回の問題となった「摂取方法」「A子さん発言」……無罪を主張する被告の主張を覆せるのだろうか。ただ確かに「摂取方法」が”分からない”という状況で裁判に臨んだのは、詰めが甘かったと言われても仕方がないかもしれない。