顔面骨折さえ糧に。ロシアW杯を逃した悔しさを韓国代表FWイ・ジョンヒョプは湘南で晴らす!
開幕戦、湘南の2018シーズン初ゴールを決めたイ・ジョンヒョプ。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
チームのファーストゴールを決めたが5月に疲労骨折…。戦列復帰を果たしたワイルドハンターに求められるのは。
[J1 27節] 湘南 – C大阪/2018年9月22日/Shonan BMWスタジアム平塚
過去に顔面骨折を経験しているという。一時期、顔の半分が麻痺状態に陥る経験をした。しかしイ・ジョンヒョプは不屈の闘争心でそのケガさえも「経験」と捉えて這い上がってきた。
今季、釜山アイパークスから湘南ベルマーレに加入し、背番号9が与えられた。韓国代表として昨年12月のE-1東アジア選手権にも選出されており、新天地での活躍次第ではロシア・ワールドカップの代表入りも期待された。
J1・2018シーズン開幕のV・ファーレン長崎戦(〇2-1)、イ・ジョンヒョプは湘南のファーストゴールをボレーでねじ込み、湘南にとって20年ぶりとなるホームでのJ1開幕戦勝利をもたらした。
しかし――。
2ゴール目を決めたあとの5月12日の清水エスパルス戦、負傷で途中交代を余儀なくされる。すると診断の結果、右足疲労骨折で手術を要し、全治3か月と告げられた。
「無理をしていました。ただ練習ができなかった間、その夢中でプレーしていた期間の良かった点と物足りなかった点を見つめ直し、反省を繰り返しました。精神面で成長できたし、忍耐力も身に付きました」
イ・ジョンヒョプはそう語る。
ということは万全なコンディションで戦い続けていたら、ロシア・ワールドカップの韓国代表に選ばれていたかもしれない……。しかし彼はそんなことを微塵も思うことはないそうだ。
「運がなかったなと、それ以上でも以下でもありません。それを含めて受け止めました」
手術は韓国で受け、湘南でリハビリに努めてきた。
そして8月26日の24節・FC東京戦で試合終盤に途中出場し、約3か月半ぶりにリーグ戦のピッチに立った。さらにルヴァンカップのC大阪との準々決勝2試合を経て、9月14日の鹿島アントラーズ戦はアディショナルタイムを合わせると約15分間のプレータイムを得た。
少しずつコンディションも上がってきているが、何よりチームは今、彼の”一発”を必要としている。最近リーグ6試合で複数ゴールを奪っているのは、3得点を記録したアウェー長崎戦のみ。前線を再び活性化させるためにも、ナンバー9のゴールが待望される。
「最後の部分の精度の部分。過程はとても良いだけに、フィニッシュのところでの『決める』という気持ちも大切かもしれませんね」
今週末からC大阪、川崎フロンターレとホーム2連戦を迎える。湘南の「勇猛韓星――ワイルドハンター」が、BMWスタジアムを埋めるサポーターに興奮をもたらす一撃を決めてくれるはずだ。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI