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【Jリーグ】プレータイム増のためファウルを流す!? 判定基準は変わっていないのでは。審判以上に選手側の質や問題も

競り合う浦和のチアゴ・サンタナ(右)と柏の田中隼人(左)。写真:森田直樹/アフロスポーツ

今季これまでの傾向について、18日にJFAから見解が示されるか。

 2025シーズンのJリーグは、野々村芳和チェアマンがアクチュアルプレーイングタイムを伸ばすことを一つ目標に掲げ、より強度の高いプレーを求めてスタートを迎えた。

 野々村チェアマンはプレータイム増加のため、主審の判定にも配慮を求めるニュアンスのコメントをしていた。それが影響したのか”多少のファウルでも見逃して、そのままプレーを流しても良い”というような風潮が広まってしまったと言える。

 背後から押されたプレーなど“見逃される”ケースが増え、結果的に負傷者も増えたのでは――。そういった状況に映るが、実情は少し異なると感じる。

 Jリーグを2000年代から取材してきた身としては、今季J1リーグは6節を終え、日本サッカー協会審判委員会の基本的な判定基準は昨シーズンから変わっていない、と捉えている。決して、昨季よりもファウルを流すようになった、とは感じない。

 例えばヴィッセル神戸の大迫勇也が、ファウルを取ってもらえないと感じることはあると話していた。しかし、それは以前から変わらない、日本での判定の傾向だ。

 大迫やボールを収められる大型の外国籍選手が背後からチャージを受ける。しかしJリーグでは、審判があまりファウルを取らない。その傾向は以前から見られてきた。

 むしろ、野々村チェアマンの「プレータイム増加&強度アップ」の言葉により、そういったプレーやファウルが際立って目に付く。その隠れていたファウルが可視化されたのではないだろうか。

 もちろん、そうした傾向により、どこまでならば主審はファウルにしないのか。あるいはイチかバチかでボールに向かう。守る側の選手の強度と言っていいのか、チャージのチャレンジが強まっている印象はある。

 そこで気になるのは選手たちのスタンスだ。ファウルを取られないのであれば、相手選手を傷つけてもいい。それぐらいの強引なチャージが目に付くのも、また事実だ。つまり、そこは選手のクオリティの問題とも言える。

 Jリーグは60クラブに増え、J1は昨季から20チーム制になった。そのなかで、有力選手は続々と欧州を中心に海外への流出が続く。

 Jリーグの選手のレベルが上がっているのか、というと決して首を縦には触れない。加えて外国籍選手についても、ワールドカップ(W杯)に出場できるレベルの各国代表クラス選手はほとんど来日しなくなった。

 止め切れない突破に成功した選手を、ファウルで止めにいく。時にはテクニカルファウルと言えるプレーもある。ただ、そんな選手側のクオリティであり、意識の問題も、この「プレー時間増加&プレー強度」問題に関係していると言えないだろうか。

 Jリーグはピッチ上において、本当にクリーンなリーグだろうか? 

 悪質なチャージやケガ人に苦しむのは、何も審判の判定だけの問題ではない。むしろ、判定が一番の問題なのか? 近年はそういった選手サイドのほうにこそ、もう少し目を向けてもいいのではないかと感じる。

 主審の責任にすることで、そのあたりの議論がないがしろにされている印象もある。

 素晴らしいプレーや選手が、酷いファウルで削られてしまう。しかも観客を楽しませるための、プレータイムも短い……。この状況が続けば、選手流出が止まることはないだろう。ファンをどうやって増やしていこうと言うのか。

 野々村チェアマンがプレータイム増加のためには審判の協力も必要だと言っていた。ただ、選手やチームサイドにも、その点の課題と向き合う必要性はないだろうか。

 例えばベルギー人のネイサン・フェルボーメン主審が初めて主審を担当した3月2日の浦和レッズ 対 柏レイソル戦で印象的なシーンがあった。選手が足を傷めてピッチに座り込んだ際、フェルボーメン主審はその選手の状態を確認しに行った。

 すると両チームの選手が一斉にベンチ前へ行き、全員が給水した。Jリーグでは“当たり前”になっている光景だ。ただフェルボーメンさんは少なからず戸惑っていて、全員がポジションに戻るまでひとまず待っていた。

 野々村チェアマンの言うプレータイムも、ここで削られている。 

 記者は昨年にUEFAチャンピオンズリーグ(CL)やドイツ・ブンデスリーガを数多く取材してきたが、確かにそのようなプレーが寸断される光景が試合中に何度もあることは、まずなかった。気候の差はあるはずだが、その90分間という限られた時間の戦いに全神経を集中している。

 リーグでは、ゴールキック、コーナーキックなどのセットプレー、そして治療など、それまでのプレーの流れが完全に途切れて、連環せずぶつ切りになる。本来はその一瞬の気の緩み(治療は別として)を突けるかどうかもまた、重要な駆け引きであるはずなのに。両チームが一緒に時間を使って休憩をとる。それがコロナ禍以降、一般化した。

 Jリーグ独特の“間合い”が、果たして観客の心を掴むことにプラスに働いているのか。そして野々村チェアマンも本来、そういったところに『最高の絵』を描くうえでの課題を感じていたのではないだろうか。

 日本サッカー協会は3月18日、今季最初のレフェリーブリーフィングを実施する。そこで、この件についても、何かしら説明があると見られる。

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 ファウルにより、選手が傷つくプレーが増えているのではないか。果たして、それが審判だけの責任なのか。Jリーグは、一体何がピッチ上での”売り”なのか。そのあたりは日本サッカー全体で考えるべき時に来ているように感じる。

Posted by 塚越始