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【新章なでしこ】20歳の星 松窪真心。ヒロインは泣いていた│vol.1

コロンビア戦でシュート5本を放ち、PKによる同点ゴールを引き出したが――。

 初めてチャンスが与えられた若手のアタッカーはデビューから最初のタームで、ざっくり分けると大きく3つのケースが考えられる。一つ目は期待に見事に応えていくケース、二つ目は好機にほとんど絡めないケース、そして三つめはボールや好機に絡んだものの結果を残せないケース。

 昨年10月、佐々木則夫女子委員長が監督代理を務めたなか、パリ・オリンピック後、なでしこジャパンの活動がスタートした。そこで初招集されたのが、松窪真心(Manaka MATSUKUBO , ノースカロライナ・カレッジ)だった。

 そしてニルス・ニールセン新監督のもと「SheBelieves Cup」の3試合で出場機会が与えられ、さらに国内コロンビア代表との親善試合(△2-2)でも緊急招集されて再びチャンスを掴んだ。上記でいうと一番厄介な三例目のスタートを切っただけに、気になっていた。

 松窪は懸命にもがきながら突破口を探して、ニールセン監督のもと、一つ確かな手応えを掴んでみせた。

 松窪はコロンビア戦、負傷した田中美南(ユタ・ロイヤルズ)に代わって前半終了間際から投入された。豊富な運動量を生かしてプレッシングを怠らず、そこから攻撃の起点にもなった。自らもフィニッシャーとなって、チーム最多5本のシュートを放った。

 そして後半アディショナルタイム、ハンドのファウルを誘発させ、高橋はなが決めた同点PKの獲得につなげた。

 それでも松窪の表情は冴えなかった。ゴールをもたらしただけにメディアは“手応え”のコメントを引き出そうとした。しかし彼女は、むしろ悔し涙をこぼしたのだ。

「めちゃくちゃショックだったし、(自分にとっても)すごいダメージでした。あれだけチャンスがあったのに……」

 そもそも今回の招集、松窪からは常に気迫が漲っていた。その理由を語るには、この半年間、初招集からの道のりに起きた出来事を紐解く必要がある。

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 (3部構成の中編「vol.2」に続く)

取材・写真/早草紀子
text and photos by Noriko HAYAKUSA

Posted by 早草紀子