【新章なでしこ】18歳で米国に渡った松窪真心が掴んだ「少しずつの自信」、代表初招集で衝撃を受けた先輩とは?「いろいろ話を聞くと、惜しみなく教えてくれるんです」│vol.2
「SheBelieves Cup」のアメリカ戦勝利にも貢献した松窪真心。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
「WEリーグではフィジカルとスピードも売りにしてたんですけど(笑)」
松窪真心は18歳だった2023年、マイナビ仙台レディースからアメリカ1部ナショナル・ウィメンズ・サッカーリーグのノースカロライナ・カレッジに移籍した。
2022年にコスタリカでのU-20女子ワールドカップに出場。翌年には豪州女子ワールドカップ直前の国内合宿のトレーニングパートナーを務めた。そのポテンシャルが評価されて、アメリカトップリーグへのステップアップを果たした。
「アメリカへ行く前のタイミングで、なでしこジャパンに触れられたことは自分にとってとても大きなことでした。それはそのあとのU-20女子ワールドカップでも実感して、アメリカに渡ってからも、常になでしこジャパンのクオリティを意識しながらできました」
一方、身長155センチと小柄な松窪がフィジカル面で苦戦を強いられたことは想像に難くない。
「WEリーグではフィジカルとスピードも売りにしてたんですけど(笑)、これまでのアメリカではそれまでのプレースタイルが全く通用しませんでした。駆け引きを上達させないといけないと感じました。身体能力でなんとかするのではなく、ボールを足元で受けて、攻撃の組み立てに参加できるように工夫するようになりました」
松窪はアジリティのクオリティを意識した。いかに初速を上げて、駆け引きで一歩上回るか。それを意識しながら、フィジカルトレーニングも積んでいった。
「実感と言えるほど自分の中ではないんですけど、アメリカに来た当初と比べると、ボールロストや倒される回数は減ったと、よく言ってもらえます(笑)。それが重なって少し自信がついてきたかもしれません」
2024年、二度のU-20女子ワールドカップに出場する。そしてU-20日本女子代表は準優勝し、松窪はMVP(ゴールデンボール)に次ぐシルバーボールを受賞した。
すると10月の韓国女子代表との親善試合で、なでしこジャパンに正式に初招集された。そこで松窪が取り組むプレーの貴重な模範となったのが、田中美南だった。
裏のスペースへ抜け出すタイミング、DFとの駆け引き……。田中のプレーは、松窪の探求心を駆り立てた。
「ミナさんのあの見えないところでの駆け引きはスゴイです。いろいろ話を聞くと、惜しみなく教えてくれるんです。一緒に試合に出られたら、ミナさんのあの特長を意識してコンビネーションからパスを出して崩せたら、楽しいだろうなって思いました」
この初招集ではベンチ入りしたものの、ケガによりピッチに立てなかった。そして今年2月、ニルス・ニールセン監督の就任後初陣となった「SheBelieves Cup」で、ついにデビューを果たす。
待っていたのは試練だった。
(3部構成の後編「vol.3」に続く)
vol.1【新章なでしこ】20歳の星 松窪真心。ヒロインは泣いていた
取材・写真/早草紀子
text and photos by Noriko HAYAKUSA