【現地取材】ドイツでは試合後、強化責任者が取材に応じる。バイエルンのエベール氏は…
ルイス・ディアスとマックス・エベール氏(右)。写真:ロイター/アフロ
例えば板倉滉のPSVからのオファーでは…。
ドイツのブンデスリーガ各クラブでは試合後、スポーツダイレクター、テクニカルダイレクター……強化責任者がメディアの要望に応じて取材に応じている。Jリーグでは新体制発表、新加入選手の加入記者会見など年数回に限られ、ドイツでのその光景は新鮮であり驚きを覚えた。
質問は読者・視聴者の関心である強化に関することがほとんどだ。もちろん、そこで水面下での動きについて語られるわけではない。ゴシップや過激なネタの多いタブロイドの大衆紙『ビルド』が国内で最も読まれているという国柄、クラブとしては、誤った情報、誇大な噂を伝えられるのを避けたい意向が感じられる。
最近であれば、PSVアイントホーフェンがボルシア・メンヒェングラートバッハ板倉滉に二度目のオファーを出したと『スカイ』の記者がSNSで発信した。すると、丹念な取材で知られる老舗サッカー専門誌『キッカー』はボルシアMGのローランド・ヴィルクス・スポーツダイレクター(SD)を取材。「コウへのオファーは来ていません。4週間前に軽い問い合わせがありましたが、それ以降、進展はありません」と否定していた。
また、写真では強面に感じていたFCバイエルン・ミュンヘンのマックス・エベール・スポーツ担当責任者だが、昨シーズンの現地取材でミックスゾーンに表われた際、とても気さくで笑顔が魅力的だった。取材にも、とても丁寧に応じていた。なでしこジャパンを女子ワールドカップ(女子W杯)優勝に導いた現・JFA女子委員長の佐々木則夫氏と印象が似ていた(怒ったら怖いのかもしれない)。
ただし、ドイツではそんなエベール氏を批判する記事もあり、相当重圧のかかるポストなのだと感じる。そうしたなかで、まずブンデスリーガのタイトルを取り戻し、チームに“明るい雰囲気”を呼び込んだのは、エベール氏の大きな功績である。ヴァンサン・コンパニ監督の能力とともにその人柄の良さにも共感し合い招聘に成功したのは、エベール氏だからこそ、とも感じた。
そしてバイエルンはこのほど、リバプールFCとの交渉を順調に進め、コロンビア代表FWルイス・ディアスの獲得にも成功した。
鹿島アントラーズの鈴木満氏を先駆者に、近年では清水エスパルスの反町康治ゼネラルマネジャー、FC町田ゼルビアの原靖フットボールダイレクター、厳しい状況に置かれながらも発する言葉からの誠意と責任が伝わる横浜F・マリノスの西野努スポーティングダイレクター……。日本でも“個性的”な強化責任者が増え、その実績によって引き抜きも行われるようになってきた。
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Jリーグの強化責任者からもっと発信されたほうがいいし、その情報は今や特に欧州・南米を中心に世界中でチェックされている(ドイツもそのあたりを意識しているのだろう)。むしろ、そんな環境を生かさないほうが惜しい気がする。