【ファインダー越しの世界】局地戦に撮影意欲を刺激された日本対北朝鮮戦
小林からのパスに反応する室屋(20番)を北朝鮮選手が追随する。前線では激しい密着マークの応酬が展開された。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
隣のカメラマンは「ノーシュート…!!」と苦笑を浮かべた。
「ノーシュート…!!」
前半30分を過ぎたころ、隣に座っていたアジア系のカメラマンが、こちらを向き苦笑交じりに呟いた。サッカーの撮影では、記録としてゴールやシュートシーンを押さえることが重要視されている。彼が決定的場面をなかなか作れない日本に苛立ち、嘆いたのも頷けた。
ただ、この日はその他の場面で見応えのあるシーンが多かった。
激しくぶつかり合う複数の選手を1枚に収める写真は、簡単に撮れるものではない。3人、4人の選手が争う場面をファインダー内に捉えることはさらに困難となる。しかし、日本対北朝鮮戦ではそうした迫力のある絵をピッチの随所で撮影することができた。
両チームの選手たちからは気骨ある精神が満ち溢れ、相手にサッカーをさせないというより、自分たちの長所を全面に出して戦おうとする意志が強く感じられた。
その選手たちの思いが顕著に表れたのが、相手と直接ぶつかる局地戦だ。前向きに激しくファイトするチーム同士の対戦は、そのまま写真に反映される。熱き思いが投影された場面が多いことは、ゴール裏のカメラマンの撮影意欲をより刺激した。
90分間を通してのシュート数は日本が7本、北朝鮮が12本。アディショナルタイムのゴールで勝利したものの、日本がシュートシーンを多く作れなかったのは、この局地戦での戦いで消耗したからだ。
それでもまず、この日のように、第2戦、第3戦でも真摯に勝負と向き合い、戦う日本人選手たちの姿が見たい。もちろん、そのうえで多くのゴールシーンが訪れ、カメラマンが困るくらいに仕事を増やしてほしい。
文・徳原隆元
Text by Takamoto TOKUHARA