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2024年、大宮アルディージャは奮い立てるのか。「違和感」の連続とJ3降格

大宮のサポーター。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

J2降格した2018シーズン、ゴール裏に掲げられた横断幕から――。

 大宮アルディージャは2024シーズン、J3でリスタートを戦うことになった。2023年はJ1復帰を目指し、営業収入も大幅に下がったとはいえ十分J1レベルに匹敵するなか、まさかの降格に。そして新シーズンに向けて、若手育成に定評ある長澤徹新監督を招いて、J2復帰を目指すことになった。

 しかし、何がなんでも1年でJ2に復帰するという強い覚悟が、これまでの補強などからはなかなか感じ取れない。なんなら、まずしっかり育成を含めた体制を作っていこう、という動きにやや比重が置かれているようにも受け止められる。

 もちろん体制も大切だ。ただ、二兎や三兎を追うと、何も得られないという痛い経験をしてきたはず。それこそアビスパ福岡の長谷部茂利監督がルヴァンカップ優勝を果たした際に残した、「『いずれ獲れる』と思っているクラブはあると思いますが、それではタイトルを獲れない。必ず今日勝つ。クラブ一丸で、今回獲れなかったら次はないのだと、そのライン上の瀬戸際で勝ってこそ、歴史は変わりました」という言葉を借りれば、その「覚悟」や「情熱」がグッとは伝わってこない。

 大宮が、クラブとしてターゲットを明確にできていないのではないか。そう感じた最初の「違和感」が、J2降格直後の2018シーズンだった。

 ゴール裏の大宮サポーターは、目指すはJ2優勝あるのみ、という大きな横断幕を常に掲げていた。果たして、これはサポーターの総意だったのだろうか。

 もちろん「J2優勝」の一言のほうが、分かりやすく明快だ。とはいえ、J1昇格を争った場合、「引き分け」でJ1昇格が決まる、なんなら1点差負けまではOK、しかしJ2優勝するためには「勝利」が必須だ、というようなシチュエーションはよく起こり得る。

 そうなった場合、彼ら(コアサポーター)は、優勝だけを狙え、と本気で言うのだろうか?

 是が非でもほしいターゲットは「J1復帰」だったのではないか。やや揚げ足取りような感じもしてしまうかもしれないが、NACK5スタジアムなどで、その横断幕を目にするたびに妙な「違和感」を抱いていたのを今でも覚えている。その応援を含めクラブとして、足並みがなんとなく揃っていないように映った。

 結局、大宮はそこからJ1のステージに一度も戻ることなく、低迷の道に迷い込んで行ってしまった。

 2021シーズンには、Jリーグ副理事長を退任した原博実氏をフットボール本部長に招へいした。これは大宮になかった新たな良い手だと思われた。ただ現場から離れていた影響なのか、なかなか有効打を放てず、監督の人選も、勝利やビジョンからの逆算ではなく、どちらかというと非常に限られたコネクションからの人選になっていった印象も否めなかった。

 名コーチから名監督へと突き抜けようとしている長澤監督には期待したい。一方、加えて、クラブはそこに元大宮の選手である喜名哲裕氏をコーチに入閣させた。いずれも原氏のFC東京監督時代にいたコーチ、そして選手である。喜名氏は人格者であり、あらゆる人と気兼ねなく接することのできる、各クラブで愛されてきた一人だ。

 ただ指導者としては、FC琉球時代、樋口靖洋体制時のコーチを務めていたものの、好調だったチームの後任になると、樋口氏のポゼッションスタイルを否定するようにプレッシングを重視した戦いを選択。しかし、そこからチームは失速し、再びポゼッション&プレッシングのハイブリットのスタイルを模索したが、特長を失ってしまったチームは武器を失って成績も下降、J1昇格どころかJ3へと降格していった。長澤監督(から望んだ可能性もあるが)の腹心といえるポストに、適格だったのだろうか。

 指導者に、結果を残せていない人材ばかりを登用していないか? それはオンラインでも公開された2023年のファンミーティングで、大宮サポーターから指摘された“素朴な疑問”でもあった。

 最近であれば、相馬氏が守備の意識を植え付け、コーチとしても支えてきた原崎政人前監督が攻撃面を含めその能力を発揮させる――という意図は伝わってきた。とはいえ、より大宮が強くなりJ2を席巻していく、という共通の絵は思い描けなかった。どのようにJ2の厳しい戦いを制していくのか、相手を一歩上回るのか。むしろ、その大切な部分を避けてしまっているような……。そうした「違和感」の積み重ねが、この低迷につながっている感じを抱く。

 佐野秀彦社長の語るクラブの在り方やビジョンは、全体像では決して間違ったものを提示しているとは思わない。が、クラブ全体で共有し合えていない、あるいは具体策にまで落とし込めていないのかもしれない。

 もちろん、結果でそうした疑念を払しょくすればいいだけだ。元ポーランド代表FWヤクブ・シュヴィルツォクが残留し、あのインパクトある規格外の弾丸ショットは、J3で大きな武器になり得るだろう。彼がハマれば一気に抜け出すかもしれない。

 一方、そんな期待や予想を裏切ってきたのも近年の大宮である。「上手くいけば」という仮定に、大きく頼りすぎてしまっている印象もある。シュヴィルツォクがコンスタントに活躍できなければ、J3の沼にハマってしまうことも想像できてしまう。

 危機感とはまた少し異なる。クラブの誰もが勝利のために戦う。J2昇格あるのみ(「J3優勝」が謳われると、またむず痒い違和感を抱きそうだ)。

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 そういったマインドから突き進む1年にしなければ、J3を勝ち抜くのも難しいのではないか。しかもJ3の中ではかなり恵まれている資金面のメリットを生かせるシーズンでもあり、むしろクラブ全体が「真の一丸」となるチャンスに変えたい。

Posted by 塚越始

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