【インタビュー#1】WEリーグ岡島喜久子チェア。高1で行動に移した「代表チームを作る」

WEリーグの初代チェアに就任した岡島喜久子氏。写真提供 WEリーグ/(C)WE LEAGUE

女子サッカー黎明期から、突出していた「0」を「1」にするパワーと魅力。

 日本初の女子プロサッカーリーグのWEリーグ(Women Empowerment League)が来秋開幕することが決まった。そのトップであるチェアパーソンに岡島喜久子氏が就任した。

「岡島さん、何者だ!?」多くの人がそのような反応をしたのではないか。

 岡島チェアはいわゆるサッカーの“業界人”ではない。しかしながら彼女は日本女子サッカーの礎を築いてきた人物である。ある意味、運命的なチェア抜擢となった。

 岡島チェアのインタビューシリーズを計3回の連載でお届けする。1回目は女子サッカー黎明期で発揮した初代チェアの“行動力”にスポットを当てる。

 中学生の時、同級生の男子生徒がボールを蹴っているのを見て、「私にできないはずがない」とサッカーを始めた。それからは常に足元にボールを置いて、お風呂でも膝から下はキックの練習をしていた。毎日がサッカーのことで頭がいっぱいだったと当時を振り返る。

「将棋のように先の先を読んでボールを出していく。パスした選手が思った通りにさらにパスを出してくれたりするとすごく嬉しい。すべてがつながっていく過程が好きでした」

 1970年代、女性のサッカー選手は極めて稀だった。岡島チェアは男子とともにプレーし、その後、日本初の女性クラブチームとなるFCジンナンに所属した。そこでAFCアジア女子選手権に単独チームとして参加したことで、思考も一変した。

「他の国はサッカー協会から“代表”として参加していたんです。日本は単独チーム。“代表チーム”を作らなくては! と強く思いました」

 高校生になった岡島氏は、そのように決意したというのだ。

 すると、さっそくコーチを見つけるため、高1の時、初めて東京都のコーチングスクールに向かった。

 そこから周りの協力を得ていき、ベルリンオリンピックの日本代表選手でもあった加納孝氏に監督をお願いした(早稲田大の先輩でもあり、初代の女子連盟会長も務めた)。様々な人を巻き込みながら、1979年、ついに日本女子サッカー連盟設立にもこぎつけた。

「設立書類の下書きは私がやりました。大変だったことは……あまり覚えていません(笑)。強い気持ちがあると、周りの人が助けてくれるということを感じました」

 日本サッカー協会でアルバイトをしていたことで人脈作りにつながった。バイタリティが溢れていて、選手を兼ねながら2代目の「事務局長」として白羽の矢が立った。

「ちょうどスポンサーが下りてしまい、とにかくお金がない。スポンサーを探すというのは当時の自分ではなかなかできませんでした。サッカーをしながら組織を作っていくという選手はいなかったので、すべてが手探りでした」

 早稲田大学を卒業後、外資の金融関係を就職先に選んだ。サッカーを続けるため、まず土日が休みであることを優先したからだ。それぐらいに、サッカー中心の日々を送った。

 念願の日本女子代表チームが誕生したのは、1981年だった。現在なでしこジャパンで指揮を執る高倉麻子監督、さらには本田美登里氏、野田朱美氏らがチームメイトにいた。

「彼女たちはまだ中学生で“子供”という感じ。遠征時のスーツケースの半分はお菓子でした。社会人の年齢の私たちの役目はいつも“子供たち”にごはんを食べさせることでした(笑)」

 一方、仕事も忙しくなり、結婚を機にアメリカで生活するようになる。そして現役引退後は、アトランタオリンピック時に日本女子代表のスカウティングを担うなど、改めて裏方として日本女子サッカーを支えることもあった。

 女子のプロサッカーリーグ構想に携わることに触発されたのが、2018年、日本代表OB・OG会から招待されたメキシコオリンピック銅メダル50周年パーティでの一つの出会いだった。

「たまたま元日本代表の金田喜稔さんと同じテーブルになったんです。彼はかねてからJリーグに女子チームを持ってほしいという希望を持っていました。『君みたいな人に(女子のリーグに携わる仕事を)やってもらいたい』と、Jリーグの村井満チェアマンをご紹介いただきました」

 その後、日本サッカー協会の今井純子女子委員長とつながり、岡島氏は女子新リーグ設立準備室でアドバイザリー・コミッティを担う。一つひとつの点が線となり、一連の流れからチェア就任に至ったのだ。

 岡島チェアの「0」から「1」を生み出すパワーは、素質であり魅力とも言える。加えて国際金融の場で培われたビジネスの手腕や見地は、転換期を迎える日本女子サッカー界にとって強みになり得る。日本初のプロ女子サッカーリーグ、WEリーグ初代チェア――岡島喜久子氏。頼もしいチェアパーソンが誕生したと言っていいのではないだろうか。

※このインタビューシリーズは3回の連載です。次回は8月29日(金)掲載予定です。

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[取材・文:早草紀子]

Posted by 早草紀子

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