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新世代レフティ鈴木冬一、ローザンヌでの刺激的な日々。日本代表の救世主候補!「新しい風を吹き込めるように」。湘南への想いも熱く語る【interview with Toichi SUZUKI】

ローザンヌでの鈴木冬一。 (Photo by RvS.Media/Vincent Galloux/Getty Images)

「湘南を出てから、湘南で学んだことが、今までのサッカー人生の中でより大きなものだったと実感した。同じようにC大阪(U-15)、長崎(長崎総科大附高)を離れたあとにも、そこで得たものの大切さが分かった」

――ローザンヌでは2020年1月にデビューし、2021-22シーズンは移籍後初めて開幕からスイスリーグに臨んでいます。最近の生活の中で、新たに始めたことはありますか?

「英語のレッスンを本格的に夏前から始めました。そこは徐々に成長していると実感できています」

――スイスは公用語がドイツ語・フランス語・イタリア語・ロマンシュ語と4つあり、ローザンヌはフランス語が使われています。そのあたりでの戸惑いは?

「ローザンヌは基本的にフランス語です。チューリッヒなど都市部に行くとドイツ語が中心。イタリア語の地区もあります。チーム内ではフランス語がメインで、英語も使われます。今後を考えても、まず英語を勉強しています」

――チームではフランス語と英語をどのように?

「チーム全体ではフランス語が基本です。英語しか喋れない選手もいるので、監督が英語で説明してくれる時もあります。理解するのが難しいところもあると、英語で何回も聞き返したりしています」

――フランス語は日常生活で身に付けている感じ?

「チームで週に1回、外国籍選手向けのフランス語のレッスンがあり、今日も先ほど受けて
きました。そのレッスンも英語で進められていくので、僕にとっては、英語とフランス語両方を学ぶ場になっています」

――言語については、食らいつけている、という感じでしょうか。

「はい。徐々に、という感じです」

――加入から1年近く経ちました。プレー面の「個」の対応での変化は?

「フィジカル的に強い選手が多く、アフリカの選手はスピードもあります。日本の選手にないリズム感を備えていて、そこに対応するのに最初は時間がかかりました。ただ、その中
で自分の持ち味を上手く発揮できています。良い意味で環境に慣れてきているのかなと実感する機会もあります」

――初めてアフリカ系の選手と対峙した時に受けたインパクトは?

「やはり懐が深く、切り返しも幅があり、驚かされた選手もいました。ただ、それについていく対応力、かわしていく技術は、自分の中でもともとあったと思っています。慣れていくことで、自分のプレーを徐々にできています」

――最近はいかがですか? 開幕からレギュラーで出続けていて、ここ数試合は途中出場が続いています。

「今シーズン、チームとして勝てない時間が長かったなか、しっかり試合で使ってもらえたり、厳しい状況で機会を得られたりしているところに、信頼を得ていると感じています。自分が試合に出ている時に勝ちたい気持ちは、さらに強くなっています」

――ローザンヌはリーグ最下位。どのあたりが、チームは噛み合わずにいるのでしょうか。

「そんなに噛み合わない、という感じではありません。やはり個人のところ。最後のシュートを打たせないところ、ラストパスへの対応、攻撃で決めきるところ。そこに問題があると感じています」

――そのなかで、左サイドのスペシャリストである鈴木選手がこだわっているところは?

「今シーズンは、上がるタイミング(オーバーラップ)など、より攻撃に関わることを考えています。プラス試合中にもシステムが変わることが多く、そこに対応していく能力。そし
て個人のテーマとしては、同時に守備強度を上げていくことです」

――肩の周りなど、ごつくなった感じがしますね。

「ここに来る前と比べたら、少し体の幅は増しました」

――フィジカル強度を高めつつも、持ち前のテクニックも武器にしていく。そのように新境地を切り開いている感じですね?

「まずテクニックのところで、求められるところはあります。とはいえ基本的には大きな選手が多く、守備時にどう対応するかが求められるので、そこを伸ばしていかなければいけない。この先にもつながっていくことだと実感しています」

――スイスで生活していると、サッカーの最新トレンドや選手の情報もどんどん入ってくると思います。参考にしている選手はいますか?

「ジョルディ・アルバ選手(FCバルセロナ)の上がるタイミングやボールを受けるポジションは参考になります。オフ・ザ・ボールを含めた質の高い動きは、もっと追求したいです」

バルセロナのジョルディ・アルバ。(Photo by David Ramos/Getty Images)

――どのようにフィニッシュに絡むかが一つテーマになってくると。

「そこでまだ結果を出せていないので、より一層こだわらないといけません。大きい試合に勝てず、最近はベンチで試合を見ていて、僕はより結果にこだわらないといけないと実感しています。そこが練習から大切になります」

――ヨーロッパに来て良かったと思うのは、どのような時でしょうか。

「いろんな国籍の選手がいて、それぞれの価値観を聞けたり、知らなかった文化に触れられるのは嬉しいことです。加えて、より日本の良さが分かります。いろんな国のいろんな人柄
に触れることで、自分の国に対する誇りも深まります。それは来て良かったと思えるところです」

――アフリカの国名を聞いても、初めてだったり、どこにあるか分からなかったり……。ただサッカーの魅力ですね、本当にボール一個で世界が広がっていきます。

「自分があまり知らなかった国の選手のほうがむしろたくさんいて、世界観や知識が広がります」

――鈴木選手が、ここが課題だ、と最も感じている点は?

「攻守両面でたくさんありますが、守備の最後で、クロスを上げさせず付いて行くところ。自分より大きな選手への対応も課題で、そこは試合中に改善していかなければいけない。今シーズン中に克服できれば、もう一段階、上がれると思っています」

――一方、鈴木選手といえば、精度の高いテクニックとキックを生かし、左サイドでしっかりボールを収めて起点になれて、長短のキックで始点にもフィニッシュに絡む役割も担える
点が魅力です。

「攻撃でも守備でもよりチームに貢献することを常に考えています。両方ともにハイレベルでやれて、誰にも負けない選手になっていきたいです」

――2019年にはポーランドU-20ワールドカップ(W杯)に出場しました。その大会を経て、日の丸への思いはどのように変化しましたか?

「あの大会をはじめ、これまで対戦した選手がチャンピオンズリーグ(CL)や世界のトップリーグで活躍しているのを見て、僕もそこに立たなければいけないと思わせてくれます。
すごく刺激を受け、自分を奮い立たたせてくれます。だからこそ、自分も日本のために戦いたいという気持ちが強まります。そこは常に頭にあります」

2019年のU-20W杯。U-20メキシコ代表戦に先発したU-20日本代表のメンバー。背番号15が鈴木。(C) FIFA via Getty Images

――10月シリーズまでの日本代表の戦いを見て、こういう力になれれば……と、もしも感じることがあったとすれば教えてください(※取材は11月シリーズ前に行われた)。

「すごく若い選手が今いるわけではないですし、ベテランの選手が引っ張っていっている中で、新しい風を吹かせられるような活躍を、この地でしなければいけない。なおかつ、選ばれた時にそのような新しい風を吹き込めるように、スイスの地で、いつどんな国に行っても、ハイレベルのパフォーマンスを発揮できるように、もっと自分自身を鍛えなければいけません」

――古巣である湘南ベルマーレの戦いぶりはチェックされていますか?

「もちろん結果は確認しています。谷(晃生)選手とはたまに連絡を取り合っています。若い選手が活躍しているので、それも僕にとって、本当に刺激になっています」

湘南の谷晃生。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

――ベルマーレ、J1残留へギリギリの戦いを続けています。

「僕がいた1年目も2年目もすごくギリギリの戦いをしていたので、どんなチーム状況なのか少し分かるところがあります(苦笑)。でもJ1で戦い続けていますし、自分ももっ
と頑張らなければ、と思わせてくれます。僕がいい刺激をもらっているので、僕も刺激を与えられるような活躍をしないといけない」

湘南時代の鈴木冬一。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI

――ポジション的には難しいが、ゴールも狙っていくと?

「ゴールはもちろん狙っていますし、より多くアシストも、と思っています。『結果』を残せていない焦りは少なからずありますので、自分へのプレッシャーに勝っていきたいです」

――直近のスペインのクラシコでは、レアル・マドリードのCBダビド・アラバがカウンターで攻め上がって、左足でファインゴールを突き刺しました。現代サッカーの潮流では、ギャップを突ければ、そういった攻略も可能ですね。

「左サイドの選手が、左サイドだけにいればいいという時代ではありませんからね。タイミングがあれば行ける力を持っていないといけない。常に考えることも求められています」

――では鈴木選手の具体的な目標を教えてください。

「昨シーズンは半年間で2得点・3アシストだったので、その2倍ぐらいの数字は記録しなければいけないと思っています」

――「数字」は誰にも分かるものなので、こだわりたいところ?

「スイスはいろいろな国に隣接しているので、見てくれる部分もあります。評価されるところで、まず一番大事なのは『数字』かなと思いますし、何より今後のサッカー人生にもつな
がっていくものです」

――鈴木選手に続いて、欧州でのプレーを目指す選手が増えています。これはしておいたほうがいい、などアドバイスはありますか?

「そういったレベルの選手は誰しもスペシャルなものを持っているはずなので、技術や気持ちの面で何かを言う必要はありません。コミュニケーションの面で、より細かい要求をされ
た時、またはする時、やはり言語がすごく大事になります。プロになってからではなく、早ければ早いほど、英語などは鍛えておいたほうがいいのかなと思います」

――ローザンヌに来て良かったな、という実感が感じられます。

「湘南にいた時も、湘南に来て本当に良かったと思いました。ただ、湘南を出てから、湘南で学んだことが、今までのサッカー人生の中でより大きなものだったと実感しました。これ
から先、それを一段と感じる時が来るのかもしれません。同じように、セレッソ大阪(アカデミー)でプレーしたあと、長崎(長崎総合科学大学附属高校)を離れたあとも、得たもの
の大きさや大切さが分かりました。だから、ローザンヌに来て良かったと思えるように、もっとやらなければいけないです」

◆プロフィール◆
鈴木冬一 Toichi SUZUKI
2000年5月30日生まれ、大阪府出身、21歳。163センチ・66キロ。左利き。セレッソ大阪のアカデミー出身で、高校途中に長崎総合科学大学附属高校へ転校。そして2019年、湘南ベルマーレへ加入。2020年まで中心選手として活躍し、2021年1月、ローザンヌへ完全移籍した。2019年U-20ワールドカップ(W杯)日本代表。東京オリンピック日本代表候補にも選ばれてきた。スイス1部リーグ今季11試合出場、同通算30試合・2ゴール。左サイドバックとサイドハーフを担い、サイドからビルドアップとフィニッシュに絡む新世代型のレフティだ。

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[取材・文:塚越始]

Posted by 塚越始

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