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【移籍の舞台裏】昨年に続くオファー。G大阪が矢島慎也を必要とした本気度

浦和からG大阪へ。矢島は中盤の一角に食い込めるか。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

 浦和レッズの矢島慎也が来季、ガンバ大阪に完全移籍することが決まった。G大阪が浦和から選手を獲得したのは今回が初めて。しかも地元北浦和とユース出身選手のライバルチームへの流出とあって、複雑な気持ちを示すファンも少なくない。

 ただ、実はG大阪は昨オフも、ファジアーノ岡山にレンタル移籍中だった矢島の獲得に動いている。浦和に復帰したあとも、出場機会の少ない矢島にレンタル移籍を含め打診していた。

 ただ矢島は北浦和サッカー少年団出身で、浦和ユース時代に10番をつけた逸材。浦和の山道守彦強化本部長は矢島について、「リオ五輪代表に選ばれ、今度はレギュラーとして埼玉スタジアムで活躍してほしいと願っている選手」と必要とした。矢島も「浦和で育ってきた。もう一度挑戦したいという気持ちが決め手になった」と、2017年は浦和での戦いを選んだ。

 それでもレギュラー獲得のチャンスは何度かあったものの、掴み切れなかった。ミハイロ・ペトロヴィッチ前監督と堀孝史監督のもと、2017年はリーグ11試合・1得点、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)4試合・1アシスト。ACL準々決勝の川崎との第2戦、大逆転劇の口火を切った興梠慎三にアシストした決定的なラストパスは、今なお記憶に新しい。

 岡山時代にボランチを務めて守備力を高め、タフさも増した。それでも連係面や献身性を高める青木拓矢や長澤和輝に先を行かれる形になってしまった。

 一方、G大阪は長谷川健太氏の今季限りでの退任、そしてレヴィー・クルピ新監督の就任が発表された。指揮官が代わっても、再び矢島獲得に動いたところに、フロントが矢島に本気で惚れ込み、クラブとして必要としている人材であることが伝わってくる。

 日本代表でも結果を残す井手口陽介の欧州主要リーグへの移籍は遅かれ近かれ実現するだろう。さらにG大阪ユース出身の市丸瑞希、芝本蓮ら有望株も、徐々に育てていくことになる。欲していたのは即戦力。矢島の獲得は、今野泰幸や遠藤保仁のサポートを受けながら、2列目やボランチなどで、より攻撃に絡める「司令塔」タイプを求めていたと分かる。

「ボールを止める、蹴るというところでは誰にも負けないと思っている」

 そう語っていた矢島が、遠藤からどのような技を学んでいくかも楽しみ。岡山ではセットプレーも担当していただけに、FKやPKのキッカーの後継者にもなり得る。

 出場機会が少なかったとはいえ、浦和でもセンスの高さや非凡さは一つひとつのプレーから感じさせていた。2016年に徳島を率いた長島裕明氏(現・FC岐阜ヘッドコーチ)は矢島について、「J2の全チームの中で、ひとり抜けていた存在だった」とも語っていた。

 2年連続で届いたオファーに、今回応えた。むしろ悔しさをバネに、弾けるように躍動する――。2018年、巻き返しを期すG大阪で、矢島の新たなる挑戦が始まる。

文:サカノワ編集グループ

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