【ファインダー越しの世界】内田篤人をサポートしていた遠藤康、小笠原満男のポジショニング
2月3日のプレシーズンマッチの水戸戦に右サイドバックで先発した内田。81分までプレーした。写真:塚越始/(C)Hajime TSUKAKOSHI
輝きを取り戻す――のではなく、7年半前までとは異なる、新たな光を鹿島に注ごうとしている。
ドイツから7年半ぶりに鹿島アントラーズへ復帰した内田篤人がすべてのメニューをこなし、新シーズンに突入しようとしている。ドイツでのケガによる長期に渡る離脱を経て帰国し、過去とは異なる輝きを放とうとしている。
鹿島の里内猛フィジカルコーチは内田のコンディションについて、次のように興味深いことを語っていた。
「鹿島に復帰する前、ドイツで最近試合に出ていなかったのは、チーム事情のためであってケガが原因ではない。内田のフィジカルコンディションはまったく問題ない。(技術面でも)紅白戦などで精度の高いクロスを上げているし、パスの出しどころも他の選手にはない、意外性のある面白いところを見ている」
2月3日に行なわれたプレシーズンマッチの水戸戦。ゴール裏でカメラを構えて撮影していると、鹿島はチーム、選手個人ともにクオリティはまだ高くない様子で、修正点や課題がいくつも見受けられた。内田も他の選手同様に仲間との連係を一つひとつ確認しながら、個人でどのようなプレーができるのか試しているようだった。
ふと気付いたことがあった。連携面では、同じサイドの右MF遠藤康と、ボランチ小笠原満男の内田に対するサポートが目に留まった。二人は内田がボールを持つと“攻めのパス”の受け手のみならず、接触プレーを避ける“逃げのパス”の出しどころとなる動きを意識しているように感じられた。その段階では内田になるべく相手とぶつかる激しい場面を作らせない、意思の表れだと感じた。もしかすると、無意識のうちに、そのような気遣いが働いていた可能性もある。
鹿島が持ち味である球際での激しい守備やボールを奪ってからの素早い攻撃を仕掛けた機会は限られた。そのなかで内田が随所で見せたボールを受けてルックアップ、そしてパスという一連の動きは実にスムーズで、チームのビルドアップのリズムを作り出す貴重な選手だと感じさせた。
鹿島がこれから戦う集団と化してくれば、「ほぼ知っている選手がいない」(内田)と言う選手個々の特長を引き出し、自らも生きるという内田の力が存分に発揮されていくに違いない。徐々に連係が高まれば、チーム力も相対的に上がる。昨季最終盤で失速してしまった、詰めの甘さを払拭するラストピースになり得るはずだ。内田が輝きを取り戻す――というよりも、7年半前までとは異なる、また新たな光を鹿島に注ごうとしている。
文:徳原隆元
text by Takamoto TOKUHARA