【なでしこ】清水梨紗が1年3か月ぶり復帰、リバプール移籍の理由とは?「苦しいことしかなかったけど、頑張ってよかった」
清水梨紗が約1年3か月ぶりになでしこジャパン復帰を果たす。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
「歩けない、走れない時期が長かったので、その時は、もう一回サッカーができるのかなって思うこともあって」
なでしこジャパン(日本女子代表)の右サイドバック清水梨紗(Risa SHIMIZU,リバプールFC)が現地10月24日、約1年3か月ぶりに代表のピッチへ戻ってきた。イタリア女子代表戦(1-1)の後半残り15分を切ったところで、ニルス・ニールセン監督から名前を呼ばれ、慌ただしく準備を整えたあとピッチに立った。
「リハビリの期間を振り返ると苦しいことしかなかったけど、その時間は無駄じゃなかったし、ここに戻ってこられて、頑張ってよかったです」

試合後の清水の表情はとても穏やかだった。
昨年のパリ・オリンピック、グループリーグ初戦スペイン戦で相手の突破を防ごうと重心を変えた瞬間、清水はその場に倒れ込んだ。右膝前十字靭帯断裂。歩くことも走ることもできない日々が始まった。
「歩けない、走れない時期が長かったので、その時は、もう一回サッカーができるのかなって思うこともあって。代表に戻りたいとは思うけど、正直そこまで見えてない時期もありました。サッカーができるようになってきてからは、やっぱり日本代表は特別だし、絶対に戻りたいと、それがモチベーションになってました」
アンダー世代から常に代表でプレーしてきた清水にとって、今回が初めて“代表”から離れる経験となった。その時間が改めて“なでしこジャパン”の存在の大きさを痛感させるものになったという。
復帰のために彼女が選んだのがリバプールへの移籍だった。
「移籍の理由はいろいろありますけど、気持ちを切り替えるとかではなくて、ケガ明けの今、絶対にコンスタントに試合に出た方がいいと思ったから。結局最後はこの代表に戻るためにっていうのが強かったですし、その決断が間違ってなかったと思えるものにしたいです」
チームメイトとなった長野風花も「自分がパスを受けたあとの梨紗さんの動きとか、梨紗さんに渡ってもう一回自分にボールが戻ってくるタイミングとか……マジで助かっています」と清水の加入を歓迎する。
「ビルドアップに関してこだわりがある監督で、練習中にも私と風花の距離感については結構指示が出ます。自分はいいものを感じ取っているので、風花にとっても自分が入ることでいい要素になってほしいです」

なでしこでも数多くの場面で見られたその“清水–長野ライン”が、リバプールでも新たな攻撃の形を生み出している。
なでしこジャパンに復帰した清水は、トレーニングでもすぐに存在感を示している。「もうちょっと出ていいよ」とウイングへ声をかけ、「まいか(浜野)の位置見て!」とセンターバックに指示。細やかな修正がピッチ全体に響く。まさに、清水らしい姿が戻ってきた。
「いや~まだ全然感覚は戻っていないです(苦笑)。ケガをしている時からニールセン監督のなでしこジャパンの試合は見ていたし、中盤の人がすごく循環している。出て行ったりローテーションしたり……見ていて動きのあるプレーが多かったので楽しみ。自分はそこにボールを出す側ですが、動きがハッキリしているので見えやすいんじゃないかなって思っています」
わずかな出場時間の復帰戦となったが、清水は自らの役割を明確に見据えている。
「サイドバックにはいろいろなタイプの選手がいますが、ビルドアップの強弱、味方を生かすポジショニングに関しては他の選手に負けちゃいけないと思っています。そこにプラスして得点に関わっていく部分もこれからチームにもたらしていきたいです」
ニールセン監督は就任後、サイドバックに多くの選手を試してきたが、ようやく真打の登場だ。清水の持つ精度と判断力が、チームにどんな化学変化をもたらすのか。
イタリア戦から中3日で迎えるスペインに渡ってのノルウェー戦、「右サイドバック清水」がどこまでコンディションを高め、どのようなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみだ。
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写真・文/早草紀子
photos and text by Noriko HAYAKUSA





