【なでしこ】遠藤純が前十字靭帯断裂から復帰「周りから“日本のサッカー面白いね”って言われて、自分も早くピッチに立ちたかった」。ニルス体制初招集、今夜イタリア戦
欧州遠征で復帰を果たしたなでしこジャパンの遠藤純。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
「楽しそうだなと思う反面、ハイプレスはすごく大変そうだと感じていました。今回やってみて…」
遠藤純の未来を大きく揺さぶった知らせが届いたのは昨年2月、パリ五輪最終予選の時期だった。前年の豪州・ニュージーランド女子ワールドカップ(W杯)で彼女はサイドバックとして能力を発揮し、さらに突き抜けていくと誰もが信じていた。しかしその矢先、前十字靱帯断裂の重傷を負い、長い長い闘いが始まった。
次に遠藤の姿を見たのは、今年のSheBelieves Cup・アメリカ戦のピッチサイドだった。ロサンゼルスをホームとするエンジェル・シティーFCに所属する彼女は、この合宿で初めてニルス・ニールセン監督と顔を合わせた。
「新しい監督になって、日本のサッカーがすごく楽しそうだなって思いました。周りの人からも“日本のサッカー面白いね”って言われて、自分も早くピッチに立ちたい気持ちが強くなりました」
しかし当時の遠藤は、まだ復帰できるかどうかも分からない不安に包まれていた。手術もリハビリも米国で行ったが、最初の数週間は地獄のような時間だった。
「前十字の手術をしたら入院すると思うんですが、麻酔が切れたら即退院だったんです。ホントに数時間後(笑)。2、3日だけ自宅で安静にして、4日目から練習場に行って……もう、そこから長いリハビリ生活が始まりました」
日本代表に戻るという目標は、遠藤にとって精神的な支えでもあった。スタッフとは常に回復状況を共有し、ニルス・ニールセン監督のなかでも彼女の名前は早い段階から挙がっていた。そして今回、ようやく復帰の扉が開いた。
「代表の試合を見て、楽しそうだなと思う反面、ハイプレスはすごく大変そうだとも感じていました。今回やってみて……やっぱり大変(笑)。まだ100パーセントじゃないですけど、ここにいる以上は、自分の“いまの100”の力で頑張りたいです」
左膝にはテーピングが巻かれているが、練習では全メニューに全力で臨む。武器であるスプリントの感覚も少しずつ戻ってきた。
「クロスの入り方や守備の感覚は、身体とメンタルの一致がまだ100パーセントじゃなくて……正直、怖さもあります。でも、やらなきゃ始まらない。いろんな選手と話しながら、自分ができることを増やしています」
なでしこでは多くの新戦力がサイドバックに挑戦してきた。所属するエンジェル・シティでは1列前を主戦場とする遠藤だが、“なでしこのサイドバック”はこのタレントの揃う中で生きるため、同時にみんなを生かすために勝ち取った場所であり、譲れない矜持がある。
「自分のクロスからゴールを生みたいし、チームにポジティブなエネルギーを与えたい。指示も要求も出していきたいし、右からも左からも“日本らしさ”をどんどん出したいです!」
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なでしこジャパンは欧州遠征初戦、10月24日25時15分からイタリア女子代表と対戦する。遠藤純の復活――あの気持ちのこもったダイナミックなプレーがきっと、なでしこの希望となるはずだ。
写真・本文/早草紀子
photos and text by Noriko HAYAKUSA




