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【INAC神戸】エースの証明、田中美南が古巣ベレーザに一撃!3年ぶりの大きな1勝をもたらす

INACの田中美南。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

岩渕真奈、阪口萌乃との連係から「落ち着いて決めるだけだった」。

[なでしこ 10節] 日テレ 1-2 INAC/2020年9月12日/味の素フィールド西が丘

 意地と意地があらゆる局面で激突した。1500枚のチケットは完売し、なでしこリーグ初のYoutube Liveのプロジェクトを企画した日テレ・東京ヴェルディベレーザが、INAC神戸レオネッサをホームで迎え撃つ。

 INAC神戸レオネッサには、昨年まで日テレのエースだった田中美南がいる。

 田中のあとを継いでセンターフォワードに入る植木理子は「田中さんが移籍したこともあって絶対に負けたくない。相手はベレーザのサッカーを良く知っていると思いますが、それでも止められない、ボールを奪えないというサッカーをしたい」と意欲を示していた。

 一方、INACはリーグ戦で、2017年9節以降、日テレから勝利を奪えずにいた。日テレを古巣とする岩渕真奈、田中にとっては特別な一戦だ。

 INACの気迫は立ち上がりから滲み出ていた。開始5分、岩渕真奈のパスから阪口萌乃のフワリと浮かせたボールを、DFの背後のスペースで待ってましたとばかりに抜け出した田中が左足で決めた。「落ち着いて決めるだけだった」と田中は、ホッとした表情を浮かべたあと両手を広げて笑みをたたえた。

「完璧に整えてから(ボールを)もらうのではなくて、自分で切り開いてゴールを奪える選手になりたい。移籍するなら今しかないと思った」

 田中のライバルチームであるINACへの移籍は、苦悩の末の決断だった。2016シーズンから4年連続でリーグ得点王を手にしてきた。それでも「(日テレは)周りの選手が上手いから。取らせてもらってる部分も多い」と感じていた。

 また、なでしこジャパン(日本女子代表)では、日本が倒すべきなのはレベルがより高い相手である。日テレでゴール前で“その時”を待っているだけでは、国際大会では通用しない。初選出のときから思っていたことだが、代表落ちを経験し、なおさらその思いが強まった。

 今季この日テレ戦を迎えるまで、すでに田中は6ゴールを決めていた。上り調子で来ているからこそ、元チームメイトには“恩返し”を、現チームメイトには“エースの証明”を示す時。田中が決めなければいけない一発だった。

 何度も話し合ってきた阪口、岩渕との連係から生まれたゴール。追加点はお礼とばかりに、田中が岩渕のスピードに完璧に合わせてDFを割るスルーパスを放って結実させた。今シーズンのINACの新しい形がハッキリと見えた2ゴールだった。

 小林里歌子にPKで1点を返されたものの、INACはGKスタンボー華のファインセーブ、杉田妃和のスーパークリア、三宅史織、守屋都弥の体を張り続けた守備……。日テレの後半のシュートは5本で、フィニッシュ手前のブロックが効いていた。形振り構わずゴールを死守したINACが日テレから大きな勝利をも掴み取った。

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[取材・文・写真:早草紀子]

Posted by 早草紀子

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