【INAC】京川舞が川澄奈穂美から学んだ新領域「自分の色を一つ持ちたい」
INACの京川舞。(C)Noriko HAYAKUSA/写真:早草紀子
マナ・タカ不在のなか抜擢、ノジマステラから決勝ゴール。照準は皇后杯へ。
[なでしこ 16節] INAC 2-1 ノジマステラ/2020年11月7日/ノエビアスタジアム神戸
なでしこリーグは残り2節を残して浦和レッズレディースの6年ぶりとなる優勝が決まった。一方、自分たちのサッカーと向き合いながら2位につけているのがINAC神戸レオネッサだ。そして前回引き分けているノジマステラ神奈川相模原戦、2-1となる決勝点を決めたのが京川舞だった。
4連勝中のINACだが、「負けてもマナ(岩渕真奈)とタカ(髙瀬愛実)の名前は出さないと決めていた。言い訳になるから」とゲルト・エンゲルス監督が語っていたように、ケガにより主力二人を欠いた。そこで京川は巡ってきた出場機会に、ゴールという最高の形で応えた。
京川のプレーの変化に目が留まったのは試合開始直後のチャンスだった。
左サイドからの杉田妃和のクロスに中央で合わせようとした京川の立ち位置が気になった。いつもであれば、DFを背後に感じながら一瞬の飛び出しでシュートチャンスを狙うのが彼女のスタイルだ。それがDFを前に置き、さらにはやや距離を置いているように見えたのだ。
この時はゴールとはならなかったが、その違和感のようなものが彼女の“変化”であることと確信できたのが、1-1で迎えた49分、京川が奪った決勝ゴールだった。
左サイドを上がった鮫島彩のクロスに、DFの死角から飛び込んできた京川がダイビングヘッドで決めた。鮫島の質の高いクロスも目を見張るものがあったが、同様に驚きを持ったのが京川のポジショニングだった。
「(日頃の)右サイドというポジション柄、相手が見えていないところからスタートを切れる。なので相手の背中を取って、サメさん(鮫島)のボールに対し、自分も消えながら入っていけているのが以前とちょっと違うところだと思っています」
もともと一瞬のスピードには長けている。それが死角から飛び出してくるのだからDFは驚くに違いない。
シーズン前半戦、こうしたプレーを試みる京川はいなかった。それを本人に問うと、いたずらっぽく笑いながらその秘密を教えてくれた。
「最近、ナホさん(川澄奈穂美)のマークにつくことが多くありまして。そしたらナホさんの動きが(対してみると)嫌だったんです。(チラッと)見た時に出てきたり、背中を取られたりしていて。自分からは見えない位置にいられるのが嫌だったので、真似てみました(笑)」
京川も26歳を迎えた。経験を積んだ今だからこそ、川澄のプレーが、言葉では伝えなくても京川に響いている。
「(これまでは)味方に合わせることが多かったです。(今は)自分の色を出すことが大事で、ミナ(田中)とかブチさん(岩渕)みたいな“色”を一つ持ちたかった」
京川が試行錯誤している胸中を明かす。
何が自分に必要か。自ら取捨選択したプレーが間違いではなかったことが、この決勝点で証明された。
京川の活躍もありINACは2-1の勝利を掴んだ。
試合の直後、すぐさま修正のために互いに意見を交わす選手たちの姿があった。リーグ優勝は浦和に渡したが、今シーズン最後のタイトルである皇后杯は渡さない――。選手たちの視線は皇后杯へ向いていた。
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[取材・文・写真:早草紀子]